オリーヴ・キタリッジの生活
オリーヴ・キタリッジの生活 / 感想・レビュー
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
アメリカの田舎町を、住む人びとの静かで激動な営みを、オリーヴ・キタリッジというひとりの女性の生活を丹念に織り上げたような作品。13編の短編はそれぞれ時系列も主人公も移り変わり、それらが少しずつゆるやかに繋がっている。それぞれの短編で同じ人物のまったく違う側面をひそやかに暴いてみせたり、寄り添ってみせたり。長年連れ添うということは、綺麗なことだけじゃない。でも誰かと繋がっている人生というのはしみじみと良い。帯にあった推薦通り「これぞ小説」といった重厚な作品。やがて来る別れまで、できるだけ慈しんで生きたい。
2019/04/06
藤月はな(灯れ松明の火)
血縁関係が濃い、田舎での人々の営みを描いた短編集。全短編に登場する、気まぐれな上機嫌と癇癪を起こして周囲を振り回す、万事、嫌味ったらしく人を批判するのに「絶対的に正しい」と自分だけには甘い、子供を束縛し、子供の妻が気に入らないという理由でその妻の持ち物をゴミ箱に捨てるオリーヴは、今で言うと「毒親」、「悪妻」、「実生活ではなるべく、関わりたくない老女」に当て嵌るだろう。だけど彼女にも夫に真実を突かれた驚愕、息子に拒絶される悲しみ、秘められた不倫未満の恋があったことで一気に愛おしくなるのは、どうしてなんだろう
2016/04/12
みみぽん
アメリカ東北部の端っこの海辺の小さな町に住む人々。主人公は元教師のオリーブ・キタリッジ。日本ではハッキリ物言う、ブレない初老女性の物語が成立することは中々難しい。しかもこのお話は決して悲劇的ではない。人生において誰しもが通り体験する浮き沈みの波を、時にシュールに哀感を込めて綴っていく。誠実に生きようとするも奥底にある歪み。傷つけ舐めあい、そして助け合う。それこそが私たち人間なのだ。優しい夫、従順だった息子もずっとそのままじゃない。オリーブの怒り、感傷、哀願。親として妻としての切ないほどの感情が胸をうつ。
2021/07/27
キムチ
ついに!っていうか、やっと、ㇲトラウトの本丸を攻めた感覚。面白い、痛快、思惟が揺らぐ。。50歳からの中年女には染みると様々なレヴューを見てきただけに溢れんばかりの情感の湖を泳いだ想いにも。薬屋広告の含蓄~「つまみ食いは⚠、2,3篇服用後暫く様子を見てネ」(´ー`*)ウン 主役・脇役・端役トロールっぽく13篇 あちこち存在をちらつかせるキタリッジのオーラ・・っていうか友達にはなりたくないけど印象強い。13編の味付けの多様さは読ませるけど、正直右肩下がりの終わりが多い。もっとも、この「生活」自体、ヘンリー
2024/09/16
なゆ
表紙からのイメージがでんぐり返った。そういう人だったの、オリーヴ・キタリッジって。というか、オリーヴ視点の話もあるにはあるが、ほんのちょっと顔を出すくらいの話も多い。そして、街の人たちにあまり良く思われてないらしい。アメリカ北東部の港町クロズビーに夫と暮らすオリーヴ。夫婦仲もモヤモヤ、愛する息子との間もモヤモヤ、嫁に対してのアレはナニ?たしかに猛獣みたいな女だわね。でも、だんだん口は悪いけど悪い人間じゃないって思えてくる。クロスビーに暮らす人々の人生もいろいろだ。ロマンスめいた終わり方に、早くふたたびへ!
2021/07/16
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