伊藤計劃記録 (第2位相)
伊藤計劃記録 (第2位相) / 感想・レビュー
カザリ
利尻島に滞在しているときに台風の中、部屋に閉じ込められてずっと読んでいました。正直内容は難しくないのに、書き方がわかりにくい。でもそのするめのような噛めば噛むほど理解したい近づきたいという気持ちにさせられるのは、彼がもつ真摯な姿勢にあると思う。もっと自由に感じていいんだ。という自由を与えたくれた天才。ほんと、長生きしてほしかったなあ。
2017/09/28
里愛乍
既読の短編と漫画。そして未読の散文とブログ記事。ここでははっきりとご自分の病状などを語られており、さらに生々しさが増しています。語り口調な文体で、内容は壮絶で凄まじくて。<この世がまったく理不尽な場所であること。どうしようもないこと><あれは、人を選ばない。あれは、突然やってくる>私は小説と作家は別物だと考えています。作家の生き方とか考え方とか関係ない。本そのものが文字が文が自分に何かを与えてくれれば。そして本書もその中の一冊です。そのはず、です…けどラストページはやるせない。
2014/10/29
磁石
伊藤計劃さんが残した、短編と漫画、それと亡くなる日まで綴ったブログの数々。映画とは映像の羅列でしかなくて、そこから何を持ってくることができるかは、見る人の知性と感性に依存する。テーマや答えありきで観るのではなく、自分の目と耳を使って、みっともなかろうが子供っぽかろうが自分の言葉を使うのが、批評の正しいあり方。まるで、死期を悟っていたかのように、ブログの最後の方に書かれている彼の心がけは、耳が痛い。そのように在りたいと、願うばかりです。
2013/08/24
しゅん
映画評がばりばりおもしろい。やはりこの人は本質的に批評家なのだ。そして、映画への論評がそのまま『虐殺器官』『ハーモニー』の制作ノートとなっているのが興味深い。特定の利益のためではなく、ある状況を演出すること自体が目的の世界精神型悪役(パトレイバー2の柘植、ダークナイトのジョーカーなど)って正にジョン・ポールと御冷ミァハじゃないか!「何故人は子供を残すのか?」という疑問から「人間は現実を物語として処理する機能を脳に与えられた」という透徹した認識を導きだすエッセイ「人という物語」は現代人必読だと思う。
2017/08/29
空箱零士
安易に「物語」に飛びつくことなく、あくまで「映像」として映画を捉えるセンス。改めて、伊藤計劃という作家が「観る」という点において稀有な才覚を持った批評家であったことを思い出させてくれた一冊。その点で、有名な『信用してはならない映画批評の書き手の見分け方』もそうだが、隠れた名日記なのが『ぼくとあなたはちがうということ』。安易に「テーマ」を読み取ろうとし、人種を出汁に叩く愚を「映画とは、そこただある映像に過ぎません。」の一言でバッサリと斬る。読む(観る)行為において陥りがちな「固定観念」への明解な警句である。
2018/07/29
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