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遅い男

遅い男

遅い男

作家
J.M.クッツェー
鴻巣友季子
出版社
早川書房
発売日
2011-12-20
ISBN
9784152092618
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遅い男 / 感想・レビュー

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遥かなる想い

60代の男の物語である。事故で片脚を亡くした 老齢の男ポールの女性介護士マリアナへの 執着を淡々と描く。 ポールの身勝手な妄想はどんどん膨らみ、 読者をミスリードする..マリアナの真意は どこにあるのか?そして著者は何を 意図しているのか? 綱渡りのように見えたポールとマリアナの 関係も 最後は落ち着くところに落ち着いた、 そんな話だった。

2017/01/02

散文の詞

初老の男が交通事故にあって片脚を失う。それまで満ち足りたと思っていた男はにわかに家庭を欲しはじめ、介護士の女性とその子供たちに愛情を抱いて、その結果、相手家族を巻き込んでひと騒動持ちあがる。 と、「老い」や「介護」といった問題や不倫など読むのが辛いかもともいながら読みすすめると、なんと、コステロなる作家が現れる。 唐突な登場に?なのだが、この作家がいい味出しているとうか、うまく話を進めてくれて、案外とさらさら読み進めることができた。 まあ、翻訳がうまいかも。 というか、このコステロって現実なんでしょうか?

2022/09/20

どんぐり

不慮の事故で片脚を失い、先行きも暗く、なのに情欲だけは不相応にある孤老の男が家庭のある移民女性の介護人に恋をする風刺劇。「介護と愛は別物よ」と女性から拒否されながらも、相手に経済的援助と情欲をちらつかせ、飽くなき渇望と恥辱をさらす。それにしても、作者の分身であるエリザベス・コステロを登場させて、作中に異界を持ち込むのはどういう効果を狙っているんだろう。前作『エリザベス・コステロ』を読んでいないので、あまり感心しない。

2019/02/17

キムチ

御大クッツェーが70歳余で執筆した介護小説?とはいえそんじょそこいらにあるのとかなり違う。特にラスト70頁は人生論調での酸味が程よい。不慮の事故で下肢損傷となったポール。アデレード在住の悠々自適独居爺さんとはいえ生活の援助が必務。介護士として関わるマリアナにえらくご執心となるが。。かつての珍友Eコステロの頻回な訪問もあり穏やかとは言えぬ生活。マリアナ一家との関わりはいわば人生の衝突みたいなもんで息子への「所得再分配」も。鴻巣氏の訳は実に軽妙洒脱。。若者語、移民語は無論微妙な英語ニュアンスの分別の苦労が巻末

2024/08/28

touch.0324

『恥辱』に続いて二作目のクッツェー。今回も主人公(ポール)の言動が身につまされ読んでいてつらくなる。先の短い人生、突如背負った身体障害、人生への悲観・焦燥。知的職業に従事していた、人並み以上に恋愛もしてきた、老後を過ごす金なら困っていない、そのプライドと惨めな自意識があぶり出される。初老の独身男で被介護者であるポールと、夫子ある介護士で移民のマリアナ間の心身の相互不可侵は、クッツェーのメインテーマのひとつである「不条理」。マリアナのあくまで業務としての親身な介護に「恩返ししたい」と詰め寄るポールは見物。

2015/03/22

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