黒猫の薔薇あるいは時間飛行
黒猫の薔薇あるいは時間飛行 / 感想・レビュー
優愛
「そっと時間に身を委ねるとき、それ以前の時間とは違った景色が見えるはずだよ。そこにこそ本当の時間がある」君のなかにも、僕のなかにも美的時間は眠っている――離れ離れになった二人がそれぞれの謎と向き合う今隣にいるのは別の人。穴を埋めるように謎を解き明かした日々は何か物足りなくて。だけど黒猫は言ってくれた。「人は別れてから愛し始める生き物だ」好きなんて絶対に言ってはくれない。でも思い出の場所に見つけた一輪のスイフヨウはあなたの想いの形だと信じている。一つ一つの展開が素敵。次作では二人の再会が叶うことを願います。
2015/04/12
kishikan
ポーの作品はほとんど、それにマラルメは全然読んだことないけど、黒猫の冷めた頭脳と口調そして付き人(つまり私)の揺れ動く恋心の描写が大好きで、美学などという小難しそうな題材にも関わらず、ついにシリーズ第3作まできてしまいました。黒猫の渡仏から半年、今回はフランスと日本での出来事の二元中継!でも、遠く離れた出来事なのに、どこかで重なり合う美しくも切ない恋の話。そしてラストシーン。この物語のキイになる「スイフヨウ」の一輪の花。会いたいけど会えなかったもどかしい気持ち。ラスト1ページの残像が心に残ります。
2013/06/12
あつひめ
シリーズ最終かぁ。いや・・・このままでは終われない雰囲気も残っている。時を重ねて離ればなれにお互いがそれぞれの謎に向き合う。心の片隅にいつも相手を想って。べったりくっついて謎を解く時より想いが濃くなっている気がする。それは女心だからか・・・。どうしてこうもお互い不器用なのか・・・。ストレートに言葉をぶつけることができない。美学の講義にのっとって美しくまとめないと気が済まないのか?男と女ってどうしてこうもややこしいのか。人間だけだよ・・・きっと・・・と思いながらも付き人と黒猫のやり取りはいつにないムードが。
2013/04/24
のいじぃ
読了。ポゥのアッシャー家の崩壊から万葉集、星の王子様など。サンドウィッチの構造。自然美の中の芸術美、地球と人間、時間の概念、自然因から成る風俗因と同じ根から育てられる天才たち、そして音楽と植物、人であるという原点。自然美に関して日本では実感しにくい問答かも知れません。また今作は両サイドのパンの形を整えるためにスマートさが欠けている印象も。マチルドと戸影のけしかけぶりも少々安っぽい気もしますが、周りに育てられる本人たちの意識変化、これも成長ですか。/天井庭園、同年に緑化フェア、実験音楽、「B.J」、灰色の館
2015/09/21
藤月はな(灯れ松明の火)
距離は遠く、離れていても積み重なる時間は永劫だ。しかし、その時間すらも「現在」が「過去」へと瞬く間に変化する「瞬間」の積み重ねである。そして一瞬は人や一生に強烈な作用を及ぼす。それを人は「運命」と呼ぶのだろう。しかし、「星から花」は「アッシャー家」というよりも「星の王子様」の印象の方が強いと思いました。プロローグの違和感がエピローグでこの本で論じられる美学上の時間も踏まえた上で氷解するのは見事です。今ここに存在する自我と距離を超えて浮遊する自我を表したエピローグはどちらも付属物でありながら本質に肉薄する
2013/02/27
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