私の名前はルーシー・バートン
私の名前はルーシー・バートン / 感想・レビュー
ミカママ
【原書】取り立てて華美な出来事が起きるわけではない。でも使われている言葉や表現は選び抜かれていて、一人称で淡々と静かに語られていく。何も持たない絶望に近い幼少時代から「I was so happy. Oh, I was happy」に至るまでのルーシーの人生をなぞることができる。職業柄、彼女の出会ったふたりの教師との出来事が記憶に残った。彼女と家族(ことに母親)との関係は、なんて寂しくそれでいて豊かなものであることか。
2017/07/16
ケイ
細かい段落。浸る間もなく、スルリと切り替わる話題。あら、でも待って。さっきの文章、何重の意味をも含んでいたのでは? そんな文の繰り返し。目につくのは母親のこと。母にされたことは、自分も娘にしていることかもしれなくて、母に投げつけたいことはあっても、それを娘にされたら何ていう?「そんなこと今更言われても」…だよね。本を閉じて思う。悔しさが溢れている。あの時に取り返しがつかない端緒となったんだ、違う?ルーシー? 裏表紙の作者の写真に驚いたのは、歳より上に見えたから。その理由はセアラ・ペイン? 彼女はだれ?
2017/07/04
はるを
🌟🌟🌟🌟☆。ストラウト作品はオリーヴ・キタリッジに続いて二作目。ある女性作家の入院の見舞いに訪れた母との会話をきっかけにして女性作家の半生を描いた作品。センテンスがとても短く切ってあり字も大きいしとても読みやすい。まるで一篇が短編小説か詩を読んでいるかと思うくらい。ストラウト作品に挑戦したい方への最初の一冊目としてオススメ。「人間(あるいはその関係性)について描けない部分を書く事によって読者の思考に浮かび上がらせる」のがストラウト作品の良さかな、と今のところの自分はそう解釈しています。
2019/02/13
nuit@積読消化中
とても良い作品と作家さんに出会えました。エリザベス・ストラウトの作品は今回が初めてですが、魅力溢れんばかりの物語でファンになりました。特に大きな事件がおこることもないのですが、日常にいる人間の描写がうまく、なんてことない母娘の会話を読んでいるだけで心地良い。また人生の移ろいでいく様子を経験豊富な著者が、主人公の視点でしっかり語られており、共感する部分もたくさんありました。他にも数冊翻訳されているとのことですので、近いうちに読んでみたいです。
2017/06/30
とろこ
回想形式で語られる、過去の記憶。鮮明なものもあれば、曖昧になっているものも。けれど、その全てが、現在の自分を形作っている。母親への愛と過去のトラウマ。結婚と自分の娘たち。淡々と、時代を行きつ戻りつしながら進む物語。所々に社会的な問題を絡ませながらも、全編に漂う静謐な雰囲気が、作品を重くしないように中和している。自分で自分を認め、自分の道を切り拓いていく勇気と、その為に切り捨てねばならないもの。退屈だと感じる人もいるかもしれないが、優しく、そして、根底には揺るぎない強さがある小説だと感じた。
2017/07/18
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