水底の女
水底の女 / 感想・レビュー
ケイ
あとがきの最後の数行で、作品全体より強い印象を受け、感想が吹っ飛んでしまった。最後の方に繰り返されるセリフ、「悪くない」、そんな感じ。考えてみれば、マーロウより歳をとった保安官の方がよほどかっこいいのだから。村上春樹がこのあとがきを書いたのは、ノーベル文学賞の発表の前だったのだろうか。カズオ・イシグロ氏も、チャンドラーのファンで、春樹氏が訳している事を喜んでくれていたらしい。
2018/05/03
starbro
記念すべき2,000冊目の登録は、村上春樹翻訳、レイモンド・チャンドラー、フィリップ・マーロウシリーズのオーラス『水底の女』です。同シリーズを約10年間読み続け、全七巻、2,700P超完読、コンプリートしました。内容はともかくとして、村上春樹がレイモンド・チャンドラーを語った訳者あとがき『これが最後の一冊』がオススメです。カズオ・イシグロもチャンドラーの愛読者とは知りませんでした。 https://www.asahi.com/articles/ASKDM5GHZKDMUCVL016.html
2017/12/24
Kei
私にとってのチャンドラーは、やはり清水訳です。サリンジャーの時にも感じたけれど、村上色が強すぎる。村上訳をこちらも意識しすぎるのかしら。ただ、村上訳でしか読んだことのないカーバーなんかは、それなりに楽しめるので、翻訳とは、とても大事なんですね。で、例えば、ヘミングウェイをペーパーバックで読むと、シンプルさに驚きと強さを、そして、却って日本語の豊饒さを知ります。私にとって、チャンドラーは、あくまで、そう、私が、昔、読んだままがよいです。湖中の女、ね。
2018/04/26
Small World
村上春樹さんの後書きのとおり、ミステリーとしての仕掛けは難しいものではないですが、マーロウが、行く先々で見つける事件の断片が増えていくのが楽しい一冊でした。村上版チャンドラーも、いよいよ最終作になってしまい、ちょっと寂しいのですが、村上春樹さんが翻訳してなかったら、チャンドラー全作を読むことはなかったと思います。そういう意味では春樹さんには感謝を言いたいです。
2018/07/22
ぐうぐう
村上春樹がフィリップ・マーロウシリーズの長編訳を手掛けたのは2007年、『ロング・グッドバイ』が最初だった。それから十年を経て、この『水底の女』によって春樹は、全7作の長編すべてを訳し終えたことになる。個人として、全7作を通して訳したのは日本では初めてのことになるらしい。あとがきで春樹は、その偉業の余韻に浸りながらも、『水底の女』のミステリとしての脆弱性を指摘することを忘れない。これまでに訳し終えた作品のあとがきにおいても、そのことに春樹は律儀に触れてきた。(つづく)
2018/01/08
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