カート・ヴォネガット全短篇 1 バターより銃
カート・ヴォネガット全短篇 1 バターより銃 / 感想・レビュー
ケイ
独系ユダヤの米国人であるヴォネガットは、第二次大戦終戦間近に兵士となり、ドレスデン(旧東ドイツ)であっという間に捕虜となり、連合軍の容赦ない爆撃が敵味方共に大量に死者を出したのやロシア軍の到来を目撃した。わずか数ヶ月で何を体験したかが、この短編集から容易に想像がつく。数語しか知らないドイツ語、見知らぬ言葉が飛び交う恐怖。敗戦国の人から盗む悪行。ロシア兵士の容赦ない制裁。すり抜けようとするズルいヤツら。知らない土地に送られる恐怖は、ロケットで大気圏外に行く恐怖にも通じたのかもしれない。
2018/11/17
KAZOO
カート・ヴォネガットの作品はむかし少しだけ読んだことがあるのですが、全短編を収めた作品集が出ているので手に取ってみました。1巻目には、戦争と女(一部)についての作品が収められています。自分が戦時中ドレスデンで捕虜になっていたこともあり、戦争についての短編は結構読んでいてもかなりこまかいところまで書かれています。それほど悲惨ということではなく読んでいても時たまユーモアを感じるところがあります。
2019/04/07
MICK KICHI
<マンスリー・ヴォネガット> 全短編1:バターより銃 「モラル」の作家と解説にもあったように、第二次世界大戦時の捕虜体験を綴ったようなショートストーリーの中に、極限の人間の取る行動を冷徹に描写している。「お土産」称して、ドイツの民家から略奪を行う兵士の姿が何度となく現れるが、渦中で直に接していた作者には、目をそむけたくなる光景が展開されたことであろう。想像力に欠ける読者としてはただ、その筆致に思いを馳せるしかない。日本語訳の文章が個人的に合わない部分があるのが残念...。訳者の方との相性かもしれない..
2019/02/06
もりくに
SF小説は私の苦手の分野で、カート・ヴォネガットはその分野の巨人と認識していたので近寄らなかったが、「怖いもの見たさ」もないわけではなかった。そこに偶々このシリーズ(全4巻)を見つけ、トライしてみた。全短編はテーマ別に編集され、この巻は「戦争」と「女」。テーマも幸いして(「科学」だったら、空想力についていけなかったかも)ほぼ楽しく読めた。「戦争」も「戦闘」は描かれていない。これは彼の従軍経験の特異性によるのだろう。「東京大空襲」と並ぶ非人道的な「ドレスデン爆撃」を市民とともに、「友軍」から受けたことだ。→
2021/01/31
ヘラジカ
楽しみにしていた全短篇がいよいよ刊行開始。4分割されたうちの1冊だが、これだけでもボリュームたっぷりである。加えて読了済が「化石の蟻」「小さな水の一滴」の二篇のみだったので大満足。もちろん全てが高品質な作品とは言えないものの、安定したまとまりの良い短篇ばかりなので次々と読み進めてしまう。中でも「バターより銃」は表題作に選ぶだけあって白眉の出来。超お気に入り。他にはブラックジョークのような「暴虐の物語」や「あわれな通訳」が好きかな。セクション2の「誘惑嬢」もベタだけど良い。
2018/09/19
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