夜のアポロン
夜のアポロン / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
『夜のリフレーン』の双子となる短編集。表題作のマユが徹に抱いた幻滅、分かるな・・・。そしてサーカスの幽霊と称す源さんの指摘は残酷な事だが、当たっている。だからこそ、二人が犯した破滅の噛み合わせが物悲しい。「兎狩り」もそうだ。悪い奴ほど、落魄れた姿は惨めで罪に怯えるとなると尚更だ。巻き込まれた方は仄暗い悦びを味わわないといけなくなったのに。だが無情な因果応報に巻き込まれるのは無垢な魂なのが遣りきれない。「冬虫夏草」は志麻子の自堕落さと責任転嫁の方に嫌悪感がこみ上げる。「沼」の母娘の蔑み合いが頂点を迎える壮絶
2019/05/15
mii22.
幻想短編集『夜のリフレーン』と対をなすミステリ短編集。ほぼ70年代から80年代に書かれた未収録作品なのでこちらもいい感じに昭和の香りが漂い郷愁を誘う。今よりも人の目や世間体が気になり偏見や縛りも多かった時代だからこそ、自由奔放さ、歪んだ性愛、背徳の妖しく美しい世界に陶酔できたのかもしれない。新しい令和の時代を迎えたが今の方がなぜか窮屈さ息苦しさを感じる。ここには昭和の情愛と背徳と言う名の花が香り高く咲き誇っている。
2019/05/30
キムチ
硬派ものから入った皆川ワールド。案外、こういった編が氏の真骨頂?ミステリ評論家日下氏編とあるように掌で温めたかのような昭和後期の秀作16編。数頁のが多いけど、一編読んでは はぁと吐息・・しんどい。#どのページにも煌めく淫蕩の光#どの位置にいても堕ちて行くような不安定感#頁間に籠る湿気と性的匂いでくらくら。「サマーキャンプ」現実と妄想の境がぼやけ うそ寒い感⤴「アニマルパーティ」獣姦ものはもともと苦手、吐き気すら「CFの女」当作中ほぼ王道的ミステリ「ほたる式部~」含みの強い遊びとは言え、ラスト、理解不可
2021/12/13
りつこ
「夜のリフレーン」と対をなす単行本未収録短編集。初期の作品が多く作者あとがきによれば「初期の頃の不出来な習作」とのことだけどなにがなにが…。昭和の香りが漂うなか、男女の抜き差しならない仲や捻れた欲望や奇妙な友情や嫉妬、悪意、殺意…。暗い話が多いがどこかに美しさもあるから読んでいて不思議と嫌にならない。好きだったのは「冬虫夏草」「致死量の夢」「死化粧」「魔笛」。最後の「塩の娘」に読者サービスを感じて感謝感謝。
2019/05/18
rosetta
★★★✮☆今年の新刊と言っても、1番古い表題作は1976年、新しいものでも96年。16編の短編集。色々な媒体にバラバラに書かれたものだから本当に内容が千差万別。本人の体験を下敷きにした戦時中を舞台にしたものや暗号物まであるが、基本的に不気味で後味が悪い話や百合っぽい話が多いような。最近の『開かせていただき』以降の作品の方がカラッとしていて好きだな。それにしても76年当時で56歳!才能が枯れない人もいるのだなぁ
2019/10/10
感想・レビューをもっと見る