三体
三体 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
評判の中国SF『三体』に耽溺する。地球から4光年離れたリアルな三体星系とバーチャルな幻想の三体時空間と、大きなスケール感で迫る。しかも、この長編の起筆部は、文革によって大興安嶺に下放(辺地に追放し、再労働教育・革命教育を施す)された天体物理学者、葉文潔の記述から始まる、中国現代史を如実に踏まえた記述は迫真のリアリティに満ちている。唯一の不満は、知識人の集まりである地球三体協会(一枚岩ではないが)の目的が、人類の自浄を見限って、三体星人に依存しようとするところだ。その短絡的な弱気は、文革以来長年の圧政に⇒
2020/04/09
W-G
連休を利用して着手。予想していたほどは読みづらくなかった。科学/物理学への言及箇所は流し読みしても大丈夫。人名を中国発音で読むか、そのまま日本語で読むかによっても、読むスピードが大きく変わりそう。内容の方は、まだこれだけではなんともいえないところ。この一冊でストーリー全体の『序』の部分にしかなっていないので、評価の確定は後の二作次第。今のところ、しっかり面白い。スケールが大きすぎて、民間人の船を輪切りスライスすることが普通に見えてしまうから恐ろしい。この三部作、中国語版だけで2100万部らしい…。
2019/08/26
パトラッシュ
圧倒的なスケールと豊富なアイデアに科学描写、エンタメのツボを押さえたストーリーなど、SFとしては文句ない。しかし従来のファーストコンタクトあるいは地球侵略テーマ作品と決定的に違うのは、葉文潔を筆頭に「人類に絶望して地球が侵略され滅亡するのを望む」人間を描いている点。葉が三体世界を招いたのは父を殺した文化大革命に復讐するためなら、文革を発動した毛沢東が人類滅亡の種をまいたことになる。いわば影の巨悪は毛沢東であり、少し読み替えればディストピアたる地球を守る人々を描く痛烈な中国共産党批判の政治小説に化けるのだ。
2019/07/30
青乃108号
まず凄まじい情報量に圧倒される。そして抜群に面白い。読み終えるのに休日の2日間まるまる潰してしまったが、読後これ程の充足感を味わったのは初めてだ。序章の段階でこれだけ読者を惹き付けるパワーを持ったこの作品、全て読み終えるまでは生きていたい。これ以上、今は語る言葉を持たない。
2022/09/30
absinthe
面白い!すごい才能が出てきたんじゃない?とにかくアイデア豊富で飽きさせない。荒唐無稽になる寸前で巧妙に次のネタを出してくる。中国の負の歴史もダイレクトに描写し、人類が立ち向かうべき危機と暗黒の歴史が重畳される手法も見事。歴史の河の大きなうねりを感じる。人間を並べて人列方陣コンピュータが動く描写など圧巻で、システムエラーを引き起こす部分にニヤリ。理系に大きく振れた作品だが文系の人にも面白いと思う。謎も神秘的で、いつも目の前の程よいところにぶら下げてくれる。
2020/01/20
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