誓願
誓願 / 感想・レビュー
ちゃちゃ
「Tomorrow is another day」物語終盤のリディア小母のつぶやき。危険な道を選び、自らは反逆者として死への道を歩むか。安全な道を選び、自らの支配力をさらに強固にして栄えある道を歩むか。ギレアデ共和国を操る権力者たる彼女の、心の揺らぎが胸に迫る場面だ。「読者よ」と繰り返される呼びかけは、同時に私たちにも選択を迫る。女性の人権を剥奪し歪んだ管理監視による恐怖政治が敷かれる“神政国家”。その欺瞞満ちた社会を崩壊に導く三人の女たちの毅然とした選択。それはまさに、暗闇の光として私たちをも導くのだ。
2021/01/24
buchipanda3
「侍女の物語」の続編。あの世界、再び。前作のじっくりと世界観を模索するように読み進める文学的な味わいとはまた違った面白さを堪能した。エンタメ性が濃くなり、物語の行方を求めて先へ先へと頁が捲れる。今作は3人の女性の視点で語られ、前作では不透明だった部分が見えてきた。歪んだ価値観が形成される社会の仕組み。その中で彼女たちには言い様のない苦しみがもたらされてしまう。立場の違う彼女たちが果たそうとする想いは何か。後書きにもあるがこの結末は時代がそれを求めたのだと思う。そしてこれはまさにシスターフッドな物語だった。
2020/10/07
藤月はな(灯れ松明の火)
陰鬱とさせられた『侍女の物語』から15年後の世界。この本を読んで、これらは耐え忍ぶだけじゃない女性たちの物語だったのだとやっと気づくことになる。武力と安寧を引き換えにした服従による飴と鞭によって成り立つも内側からジュクジュクと腐り落ちていくギレデア。建国当時の共犯意識で結び付く小母達も互いに足を引っ張り合う様は人間の愚かさを見せつけてくる。そしてジェイドとアグネスが邂逅してから互いの文化のギャップ(ジェイドがギレデアの料理の粗末さに文句を言ったり、アグネスがギレデアの制服以外の服に心許なさを感じるなど)
2021/03/28
パトラッシュ
重苦しい悲劇的展開に終始した『侍女の物語』に比べ、続編の本書はほとんどエンタメ。ギレアデへの復讐に燃える三人の女によるスパイものだが、正直失敗ではないか。ル・カレやグリーンのような、ひりひりするスパイの孤独や恐怖、脱出の苦闘や追跡ドラマは感じられない。リディア小母が拷問の果てにギレアデに屈するまではもっと詳細に書き込むべきだし、素人のニコールが簡単に潜入任務を果たす経緯はラノベだ。ジャド司令官らギレアデ側の面々も悪というよりピエロに近い。アトウッドは確かに優れた作家だが、スパイ小説を書く才能はないのでは。
2020/11/25
さつき
前作は侍女のオブフレッドの物語でしたが、今回は三人の人物の視点から描かれています。司令官の「娘」、権力を握った小母、そして「幼子」。様々な視点から描かれることでギレアデの姿がより見えてきました。前作同様、陰惨な場面、憤りを覚える出来事も沢山ありましたが、未来に希望を抱けるラストであったことに救われる思いです。
2021/09/25
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