実力も運のうち 能力主義は正義か?
実力も運のうち 能力主義は正義か? / 感想・レビュー
ゼロ
能力主義(メリトクラシー)がエリートを傲慢にし、敗者との間に未曾有の分断を齎している。特に学歴社会が問題で、大学の在り方はどうなのか?を指摘している。確かに学歴を手に入れることは、本人の努力のように見えるが、それは勉強ができる親の経済力であり、努力ができるのにも才能は必要となってくる。つまりは、遺伝子も重要であり、自分の実力というのは、本人のものではなく、運であるという考えは分からなくはないが、救いはないように思える。疑問を呈することは面白いが、解決策があっさりとしていたので、そこにも力を入れて欲しかった
2022/08/28
R
能力主義という主張が生み出した、現在アメリカのゆがみと思考の変遷を解説することで、真の平等とは、目指すべき正義とはと問いかける本でした。非常に面白い。地位や金銭を得る資格が能力に起因するという考えが、それを得ていない人は努力が足りないと断じている現状、しかし努力では最早打破できない実情との乖離が、現代アメリカの混迷、エリート批判の根幹をなすのではという指摘だった。平等が機会を表すものならば、名門大学に入るというイベントに、一定水準以上の母集団からくじ引きでという解決は、興味深いと思った。
2021/09/06
KAZOO
能力主義とはいうものの家が金持で高学歴(最近は大学院を出ている)ということでの格差が進んでいるような感じです。それをサンデルが本当に実力主義であるのか、ということで問題を投げかけています。アメリカでは東部のエスタブリッシュメントへの反感がトランプ人気となっているようですが、そういう本人も金持の家に生まれて高学歴です。自民党を壊せと言った小泉元首相に似ているのでしょう。
2022/09/17
koji
例え不平等があっても、それが能力の差なら許せますか。それが本書の問いです。本書を読む前の私もそうですが、99%はYESと答えるでしょう。しかし、サンデル先生はそこに疑問を投げかけ、まず米国で起きた名門大学の不正入試工作を事例に問題の本質に切り込むことから始めます。そこから、キリスト教の労働観の変遷、65年前に能力主義の暗黒を問いかけたMヤング、米国政治の対立に論を進めます。結局、アメリカの分断に行き着き、結論として条件の平等、共通善、謙虚さ・寛容さを問います。概ね納得。では翻って日本は?これは私たちの宿題
2023/04/12
ふみあき
米国で最も著名なコミュニタリアンの新刊。トランプ現象を惹起した要因として、能力主義の専制に注目する。それはエリートたちから謙虚さを奪い、共通善の成立を困難にした。これには保守よりもリベラルの政治家たちの罪がより重い。厄介な道徳やイデオロギーをめぐる論争を回避するため、彼らは「賢いVS愚か」というレトリックを用い、テクノクラート的な政策の提案に終始した。そして人種差別や性差別には極めて厳しい反面、学歴差別には妙に寛容で、彼らは労働者階級への蔑視を隠そうともしない。その倨傲がポピュリストたちの反逆を招来した。
2021/04/27
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