夜の少年
夜の少年 / 感想・レビュー
ケイ
本国フランスでは、本屋さんが読んで欲しい本と推して本屋大賞候補となり、高校生がフェミナ賞に選んだ作品。確かに、胸に迫ってくる描写はこの表紙が表すとおり。父が息子に抱く不器用で強い愛情には心を動かされる。。思春期になった息子が、やり場のないエネルギーを、はっきりとした信念もないままに政治に向けてしまうのを見守るしかない怖さもわかる。高校生が共感したポイントはここではないだろうか。しかし、終わり方があまりにもフランス的でないかと(あくまでも個人的視点だけれど)いう想いもある。
2023/02/25
アキ
この物語は父親の視点で語られる。母親の最期も息子の事件も。そして小説のラストに初めて息子フスの手紙で彼の心情を知ることになる。著者は57歳で本書でデビューしフランスの賞を数多く受賞した。この物語は彼が書かざるを得なかったのであろう。この父親は彼自身であろう。「すべての人の人生は一見、敷かれたレールの上をひたすら走っているように見えるが、実はアクシデントと偶然、そして反故にされた約束の積み重ねだ。人生というのはこの多くのささいなことの連続で、それがどう配置されるかにより君主になるか囚人になるか決まるのだ」
2022/06/24
ケロリーヌ@ベルばら同盟
宵闇に翳りゆく胸の空洞に、幼いものたちが踊りこみ、また駆け去る。その軽やかで無慈悲な足音に縋るように記憶を辿る父の独白で綴られた、ある家族のメモワール。フランス北部、不況に喘ぐ町で、妻を病気で亡くした痛手の中、男の子二人を必死に育てる鉄道員の私。長男は地元フットボールチームの花形選手、次男は勉強熱心で柔和な性格の、仲の良い兄弟。掛替えのない大切な子供たちに、不器用ながらも真摯に愛情を注いで来た筈なのに、掛け違って行く親子の心。追憶と悔恨に揺らぐ心情を映すように、時系列が前後する文章が、深い余韻を刻む作品。
2022/09/05
J D
妻を亡くし、二人の息子と生きる父親の語りで物語で進む。フスとの間にある寄り添えない壁のようなものが痛くて私の心に突き刺さる。読んでいる今日が雨だからなのか、どんよりとした気持ちになりながら読んだ。この作品の着地点はどこにあるんだろう。一人悩み、彷徨う父親が悲しい。ゆっくり味わいたい作品でした。もう、一度読みたい!「夜の少年」タイトルが良い!勧めて頂いた読友さんに感謝です。
2022/11/23
ナミのママ
最後のページを読んだ時に鳥肌がたった。父の日にふさわしい「父の物語」だ。フランスの北東部で鉄道員として働く主人公。2人の息子の父であり息子に愛情を注ぐ。妻を亡くしたあとも必死に誠実に子育てに向き合う。長男のフスが思春期を迎えるまでは関係も良好だった。この時期に親子の会話が減るのは父と息子に限らないことだろうが、戸惑い悩む父の姿がある。中盤、フスが大怪我を負ったところから一気に流れが変わった。何歳になっても我が子は子供なんだと気がつかされる。【仏・高校生が選ぶフェミナ賞】他多数受賞。
2022/06/19
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