うけいれるには
うけいれるには / 感想・レビュー
シナモン
兄は彼に深く愛情をそそぎ、姉は彼のすべてを拒絶した。後に生まれた末っ子の「普通に生まれてきてごめんなさい。兄さんは死んでしまったのに、生きていてごめんなさい」の言葉も切ない。障害を持って生まれてきたこどもをめぐる家族の物語。戸惑い、嘆き、嫌悪感、喜び、丁寧に描かれる家族の心情に心を揺さぶられた。深い一冊だった。
2023/05/04
はる
フランスの小さな山村で、幸せに暮らす家族に生まれた待望の第三子。だが、この子は重度の障害を持っていた……。目が見えず、話すことも歩くことも出来ない…。長男と長女、そして後から生まれた末っ子の、それぞれの悩みや葛藤、そして再生を、繊細な感性と美しい文章で綴っていく。三人の中では長女の想いが一番生々しく、痛々しい。あとがきによれば、作者の少女時代を下敷きにした物語だというのも納得。語り手は庭の石。その知的で超然とした語り口が、不思議な魅力を醸し出している。
2023/05/17
ナミのママ
フランスの自然豊かな土地に暮らす一家。父と母、長男と長女、そこに生まれた次男は「社会に適応できない子ども」だった。第一章は長男、二章は長女、三章はその後に生まれた末っ子の視点で書かれている…いや、それよりも驚いたのは「私たち石」という中庭の石が語る文章だ。全く違和感なく「石」の言葉が語られる。障害を持つ子どもがその存在だけで家族の一員として刻まれる姿に心を動かされる。不思議な物語だった。【2021年フェミナ賞】【2021年高校生が選ぶゴンクール賞】【第1回日本の学生が選ぶゴンクール賞】受賞
2023/03/24
たま
フランス南東部セヴェンヌ山地の一家に重度の障がいのある子どもが生まれる。兄と姉がその子どもといかに生きたか、フランス的な細かな心理描写-類型的感情にとどまらない、生理的、神経的レベルの細かさの描写に引き込まれた。両親は兄姉にケアの分担を求めないが、子どもを慈しむ兄も、反発する姉も、子どもの存在に圧倒されて10代を過ごす。子どもが亡くなったあと生まれた末子も子どもの気配に包まれて育つ。姉を支える祖母、そして背景となるセヴェンヌの自然が素晴らしく、中庭の石、一家の歴史を長く知る石が語ると言う設定に癒やされる。
2023/05/26
ヘラジカ
表紙イラストは児童書かと見紛うような柔らかさを持っているが、対して作品内容は非常に現実的で、文体もやや硬質感がある。決してご都合主義に堕したハートウォーミングな物語ではない。しかし、どこか牧歌的で童話のような印象があるのも事実。それは超然とした”庇護”の眼差し(何せ家の庭石が語るのだ)が穏やかに包み込むように見守っているからだろう。多情多感が詩的にかつ淡々と綴られる文章、三者によって別々の視点から家族を立体的に見つめる構成など、「流石はゴンクール賞候補作」と唸る佳品だった。
2023/03/18
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