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月に泣く

月に泣く

月に泣く

作家
丸山健二
出版社
文藝春秋
発売日
1986-09-01
ISBN
9784163091907
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ジャンル

月に泣く / 感想・レビュー

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こばまり

ひどくつらいことや悲しいことがあると、泣く代わりに眠る資だ。心身が文字通りスリープモードに入るのだ。本書を読んだら寂しくなって、早々に布団に潜り込んでしまった。私をどこかに連れ去るこんな小説が堪らなく好きだ。

2017/04/21

eirianda

読メのレビューを読んで、読んでみた作品。なんとも美しい文体で、昭和の田舎の変化を抉るように、書かれている。今は偽善臭漂う程の一様の倫理観で、都市も田舎も覆われているが、テレビが媒体で一挙に広まったのかと、妙に納得した。テレビって分かりやすいもんなぁ。人間が本来持つ残酷性が、あたかも無かったように見える現代は良いことなんだろうが、貧富格差が広がればまた噴き出すのは、世界情勢見てたら想像できる。

2017/05/17

しゅんしゅん

「月に泣く」も「鳥籠を高く」もすごく良い。どちらも人生折り返し四十男の寂寥感がひしひし押し寄せる。田舎も都市も寂しく描かれ、回想と現在と幻想めいた風景が渾然と流れている。諦めの中に光る安堵感、もうひとりの自分との分裂的な対話、狂っているというにははっきり研ぎ澄まされている意識、欠如した倫理観の中にもどこか律儀で細やかな情が漂う。孤独な男を辛うじて支え得るささやかなもの。それは林檎の木の匂い、屏風の中で琵琶を掻き鳴らす法師、良い声で泣いてくれる鶯などであるが、そんな拠り所も時の流れに晒されて風の中へ溶ける。

2021/11/05

ももたろう

何というもの悲しい作品だろうか。主人公の透徹された孤独と悲しみがじわじわと溢れ出てきて、読むものの心を覆いつくすような味わい深い作品だった。孤独と悲しみの中にも、爽やかな読後感が残るのは、主人公が林檎と八重子との思い出を愛していたからだろう。淡々とした文章の裏に、深い悲しみと孤独が流れる素晴らしい作品だった。

2015/09/30

らきあ

『鳥籠を高く』も『月に泣く』も静かで凄みのある小説だった。一人の老人と私しかいない街にいる鷽の存在はとても大きい。 『月に泣く』は10行にも満たない文の塊が続いていく。口下手な人がぽつりぽつりと語るかのような書き方なのに、私の住む村の流れや情景が鮮明に浮かぶのがすごい。きっとまた読み返す。

2021/05/28

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