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帰れぬ人びと

帰れぬ人びと

帰れぬ人びと

作家
鷺沢萠
出版社
文藝春秋
発売日
1989-10-01
ISBN
9784163113005
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帰れぬ人びと / 感想・レビュー

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みも

早熟…その才能はラディゲやサガンに近い。つまり比類なき凄まじき才能。文体はナイーブで瑞々しく、だがその若さでは獲得し難い慧眼と老練。それ故か常識の枠に収まりきらずに生き急いだ孤独な魂。僕は彼女の魂に溶かされ心酔の中で読了したが、ほぼ同時に親友の自死を知らされる。彼女が僕を呼んだか…それとも親友が僕に彼女を読ませたのか。二人は僕の中で重なり、偶然と呼ばせない何かが僕の中で蠢いた。これ以降、僕は感想を上げるどころか、暫く小説を読む事さえ出来なくなったのだが…今、僕は彼の面影を追いながら2年越しで書く事にした。

2022/01/07

ポルトン

四篇からなる短編集、「川べりの道」で文學界新人賞。表題の「帰れぬ人びと」で芥川賞候補。これらを学生時代に書き上げたのは正直凄い! 繊細な人物描写はとても学生が書いたものだとは思えないほどでした!以来何度も芥川賞の候補に上がり続けたのも納得。2004年に自殺…享年34歳。生きてたら彼女はどんな作品を書いてたのだろう…。本編の中では割と緩めの作品、「かもめ家ものがたり」が大好きです。

2017/10/15

Take@磨穿鉄靴

惹き付けられるタイトル。「帰れぬ人びと」。では「帰れる人」とは?多分誰も本当に帰れる場所などというものは持ち合わせていないのだと感じた。諸行無常。帰る場所はもちろん空間としての家や人そのものの器も有効期限があっていつまでも帰れる場所、器なんてない。そんなことを考えながら読む。四編の短編集。どの話も独特の味わいがあった。匂いなど五感の描写も丁寧に感じた。私はここが帰る場所だと思い込んでいるがそう思いたいだけなのかもしれない。★★★☆☆

2022/05/28

hit4papa

勝手ながら往年のトレンディドラマな匂いがして敬遠してた鷺沢萠作品。いやいや、しっかり文学しています。読後に寂寥感が漂う作品集で、通底しているのは何かを犠牲にしてしまった人々が、現実に折り合いをつけていく様。高校生の時の処女作「川べりの道」は、家族を捨て女性と暮らす父、そして母、姉の姿を十五歳の少年の視点で描いています。喪失から希望へというよりも諦観に近いから、より心に残る作品になっているのでしょうか。文学的に早熟だったんですね。感心。自身の美貌と引き換えに裕福な生活を選択した姉「帰れぬ人びと」、他二編。

2017/11/27

カザリ

鷺沢萠は、天才。この人の最高傑作はウェルカムホームだと思う。この作品は、未完成感があって、鷺沢ファンにしかおすすめできないけれど、もっともっと長生きして描いて欲しかったなあ、と思う。本当に生きるのがつらい人だっただろうなと思わせる細やかな感性で、その感性を客観的に見る冷徹さもあって、切ない。ウェルカムホームはこの繊細さにつきぬけた明るさがあって最高。

2019/09/30

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