あるクリスマス
あるクリスマス / 感想・レビュー
おしゃべりメガネ
多くの方が幼い頃に誰もが経験(体験)するコトになろうであろう「サンタクロース」の正体とは?幼い頃に両親が離婚して、今は父親と離ればなれの生活をしている主人公「バディ」はあるクリスマスを父親と過ごすコトに。普段から一緒に暮らしていない父親とのクリスマスはどこかギクシャクしていて、イマイチ盛り上がりません。そんな中でもココロ優しき「バディ」の気づかいに胸がホッとします。日常が当たり前に過ぎていきますが、その'当たり前'に慣れてしまってはいけないですね。日々の生活やこれからの未来に改めて感謝しなくては、ですね。
2018/12/24
しいたけ
物事には必ず、人から窺い知れない裏がある。少年の抱えた孤独と痛み。しっくり胸にはまらない両親のありよう。子どもがじぶんを愛してるとの実感を求める、醜悪な親。その哀しみをすくいとれてしまう繊細さが、カポーティを苦しめた。「いい子にしていました」「サンタクロースがきました」というクリスマスを過ごさずにいる子どもがごまんといる。どこかで膝を抱える子どもに届けて欲しい、癒しという名のプレゼント。メリークリスマス。
2019/12/24
アン
両親と離れアラバマで親戚たちと暮らす6歳の僕バディー。60歳を越えた従姉のスックとは無二の親友。ニュー・オーリンズに住む父から一緒にクリスマスを過ごしたいと手紙が届き不安を抱えながらも父のもとへ。故郷の親しみある牧歌的な暮らしとは違う都会での大人の世界を垣間見た戸惑いや怒り。孤独な父親と純真な僕との心のすれ違い、愛を求める姿は切なく胸を締め付けられるよう。心を痛めた僕を優しく見守るスックの救いの言葉。父親へ宛てた手紙は美しくも哀しみの涙の雫が光るようで心にしみます。山本容子さんの銅版画も味わい深い一冊。
2020/12/17
buchipanda3
離れて暮らす父親と幼い息子が初めて一緒に過ごしたあるクリスマスの日。本来なら楽しいはずのその日。でも愛情の微妙なすれ違いにより、切なくて遣り切れない情感がもたらされ、とても印象深い物語となった。唐突に父親のいるニューオリンズへ呼ばれて、慣れない街と人に怖さを感じながらもいい子に振る舞う少年。その姿からは愛情と不満が入り混じった複雑な心情が見え隠れする。そんな彼がクリスマスの日にあることを知り、その際に父親に向けて言ったセリフにハッとなった。無邪気とも大人な一面を見せたとも言える。そして最後は沁みた。
2020/12/15
ムッネニーク
63冊目『あるクリスマス』(トルーマン・カポーティ 著、村上春樹 訳、山本容子 銅版画、1989年12月、文藝春秋) 1982年に発表された、カポーティ最後の作品である自伝的小説。1956年に発表した『クリスマスの思い出』同様、カポーティの分身であるバディーが少年時代に経験したクリスマスでの出来事を語る。 〈とうさんげんきですか、ぼくはげんきです、ぼくはいっしょうけんめいペダルこぐれんしゅうしてるので、そのうちにそらをとべるとおもう、だからよくそらをみていてね、あいしています、バディー〉
2024/05/07
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