本当の戦争の話をしよう
本当の戦争の話をしよう / 感想・レビュー
はやしま
著者の悲惨な戦争体験がベースだが、世界がほぼ自分と自分の部隊(献辞もその範囲)と自身の周辺。それと気づかずに自分の癒し(p.253)と男を殺した言い訳探しをしているように感じた。ベトナム(戦場)の感覚が希薄。寓話風にするためもあったのだろうが、一兵卒とはこんなものなのか、それとも村上春樹訳の文体故なのか。ベトナム以後更に残酷な状況も伝えられる今、これは「本当の戦争の話」というより「ある戦争の話」と受け止めた。冒頭の「兵士たちの荷物」と出征前の「レイニー河で」はとても良かったけど。【G1000】
2015/12/12
akira
図書館本。 ここ数年で最高の一冊。表現のなにもかもが素晴らしかった。これほど心を右に左に揺さぶられた記憶は懐かしい。出会えてよかった。間違いなくマイオールタイムベストに残る一冊。 頭に残って離れない記憶。それが本の内容なのだからびっくりする。そんな中でこういうことが本当におかしくて、それこそが本当に人間ぽい。この本に出会うきっかけになってくれた訳者村上春樹氏には感謝しかない。 「新しいやつなんて送ってくれやしない。彼女はもう僕の恋人でさえないんだ」
2019/09/21
ふう
【ガーディアン必読小説1000冊】#68 泥と死体と漆黒の闇、炎熱の太陽。圧倒的に迫ってくる、語っても語っても理解されないであろう本当の戦争の話。さて、ぼくらは、いやぼくは、この時代何をしていたんだろうか。何を担っていたのか。
2015/12/20
Cinejazz
〝本当の戦争の話というものは信じてもらえっこない。娘のキャスリ-ンが私に尋ねた「お父さんは人を殺したことがあるの?」... ヴェトナムは実にいろんな不思議な話で満ちていた。あるものはちょっと信じがたい話、あるものは全くの眉唾もの、ずっと後に残る話は、気違い沙汰と日常茶飯事を隔てる、或いは狂気と正常世界を隔てる境界線にある類いの話なのだ〟・・・人を殺すということ、失った戦友の記憶、帰還後の若者たちの胸に刻まれた「戦争悪」を比喩した、ティム・オブライエン作、村上春樹サン翻訳による、鮮烈な22篇の短編集。
2023/06/07
hirayama46
はじめてのティム・オブライエン。これはなかなかすごいな……。ベトナム戦争を描きながらも、ちょくちょく作者が顔を出して小説のフィクション性を(フィクションのなかから)指摘してくるというひねた仕掛けですが、必ずしもまっすぐな事実だけが現実ではなく、虚構のなかでしか語り得ない「本当」があるということが切実に感じられる、たいへん迫力のある本でした。ティム・オブライエンは他の本も読まなくてはいけないな……。
2017/11/22
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