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コルシア書店の仲間たち

コルシア書店の仲間たち

コルシア書店の仲間たち

作家
須賀敦子
出版社
文藝春秋
発売日
1992-04-01
ISBN
9784163131900
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コルシア書店の仲間たち / 感想・レビュー

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nico🐬波待ち中

ミラノ暮らしを振り返る回顧録。戦後のミラノにおいて、コルシア書店は自由の波に酔う若者達の小さな灯台のような存在。職種や人種は違っても、仕事帰りにふと立ち寄り語り合う仲間達。僅かばかりの給料で、けれど夢や信念は大きく希望に満ち溢れた若者達の、少々青臭い言動はなんと輝いていたことか。あの頃のひたむきな若者達を羨ましく思う。「人間のだれもが、究極においては生きなければならない孤独と隣りあわせで、人それぞれ自分自身の孤独を確立しないかぎり、人生は始まらない」須賀さんの厳かな教えを、私もじっくり噛み締めていきたい。

2019/04/14

アン

1960年代、ミラノの大聖堂近くの教会の中で佇む「コルシア・デイ・セルヴィ書店」。そのサロンで繰り広げられる個性的な人々との交流を追想するエッセイ。社会の片隅においても、生きることに懸命な人々の姿を、須賀さんは美化する事なく冷静に見つめている気がします。ですが時を経て、そこには人間への慈愛が存在し、聡明な須賀さんの柔らかな優しさのエッセンスが漂ってきます。

2018/08/06

神父で詩人のダヴィデに導かれ、コルシア・デイ・セルヴィ書店ですごした日々の回想録。わたしは須賀さんの作品を、発表から遡ってよみ進めていますが、今回既読作品の要所要所で登場した、コルシア書店についてよみ、周囲ができあがっているジクソーパズルに、残りのピースをはめたような、心地よい気分になりました。感情も描写されてはいますが、ひとびとにたいし一歩さがってしずかにみつめる須賀さんのまなざしが、一貫しており印象的でした。さいごの一章「ダヴィデに」、ここにすべてが集約されているような気がします。

2015/09/04

Gotoran

著者がイタリア・ミラノ在住期間に深く係ったコルシア書店、そこで知り合った人達との交流を回想したエッセイ、11編。夫々に紹介される人達を生き生きと描き、あたかも身近にいるような錯覚すら・・なにげない日常をさりげなく紡ぎ出された余韻が漂う美しい文章。イタリア文学翻訳者で脚光を浴びエッセイストとしても注目された著者、須賀敦子独自の世界に引き込まれ、静謐で上質なひと時を味わうことができた。

2014/10/30

tom

夫の死を基準点にして、何年前、何年後という形で始まることの多いエッセイ。登場するのはカトリック左派運動の拠点だったコルシア書店と関わりを持つ人たち。お友達だったからこそ語り合い、知ることができた彼らの人となりを、絶妙なコメントで書き連ねていく。うまいなあと思う。でも、彼らが書店を通して何をしようとしていたのかは、ほとんど語られない。この違和感が読みながら続く。この本は須賀敦子が書店を去って30年以上も経てから書かれたもの。ひょっとしたら、彼女にとって書店そのものは語りたくないものだったのかもしれない。

2022/01/23

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