ゾマーさんのこと
ゾマーさんのこと / 感想・レビュー
ケイ
少年が不条理さへの怒りに制御を失ってしまうことも、年月の間にそれを克服し、自信のついた青年になっていくさまも、よくわかる気がした。彼の怒りや悲しみ、悔しさをこっそりわかってくれる大人はいない。誰も共感してくれない。ただゾマーさんは、無意識的にだが、彼がそんなときに不意に姿を見せ、彼の負の気持ちを癒す。ゾマーさんの歩く様子を読みながら、どうか彼に休息が訪れますようにと願うように思った。
2015/04/08
ペグ
再読。何年か前に読んだ時、わたしは完全に読み間違えをしていて、ゾマーさんとは主人公の少年の空想の世界の人だと思っていました。今回再読してみて、ゾマーさんが確かに存在していたのだと解ったのです。戦争のつらい影を思い起こさせるゾマーさん。ピアノ教師のフロライン・フンケルさんは過去にきっと哀しい恋愛をして、その後遺症で、あんなにヒステリックになってる。彼女は自分に怒ってる。挿絵も良い。そして「ゾマーさんのこと」この題名が好きです。
2019/02/25
NAO
ドイツの自然豊かなのどかな村の少年が語る、変り者ゾマーさんのこと。何かに憑かれたように何かに追われるように一日中歩き続けるゾマーさんとはいったい何者か、何が原因でそうなってしまったのかは、全く語られていない。だが、絵のように美しい平和な光景の中で立ち止まることもできずに歩き続ける孤独でつらそうなゾマーさんは、なんと異彩を放っていることだろう。その彼の孤独をダイレクトに感じることができたのは、「空も飛べる」と信じていた純粋な少年だけだったのかもしれない。
2017/07/22
キジネコ
面白い本です。一人の少年の成長譚だろう・・程度の期待で読み始めたのですが読了後すぐに冒頭から読み直しました。語られなかった「ゾマーさんのこと」が、主人公「ぼく」の中で語れる様になるまでに40年の歳月を必要とした、その訳。すごく考えさせられます。子供が見る自分を含む世界は、カオス。虚実、夢、願望、大人たちの要求、そこにある約束事に戸惑う日々から学び取るモノで社会性を身につける経験をします。その世界の端っこに不可解なゾマーさんがいました。子供にとって 恐ろしく 近寄りがたいのですが気になって仕方がない。続く☛
2014/07/19
キムチ
こんなボリュームで感想を書くのは楽しい~自分の直感をストレートに出せる♪世界津々浦々でありそうな設定の話。ある人間・・周囲と隔絶し、異常人格という訳じゃないけど、孤独の世界にひっそり閉塞している。でも実在かどうかは、作者の胸の内「僕」が木登りをしなくなった時・・少年時代も終焉、それと共にゾマーさんも地上から消えた。さすればゾマーさんって「僕」の少年期のある意味の象徴であって精神世界の比喩?ジュースキント氏・・何かしら甘い香りのネームだけれど持っている辛みの世界に惹かれる。とはいえたった2作読了だけど。
2016/05/29
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