錬金術師通り: 五つの都市をめぐる短篇集
錬金術師通り: 五つの都市をめぐる短篇集 / 感想・レビュー
なおこっか
追悼読書。翻訳家、書評家としての文章ばかり読んできたので、池内先生ご本人の綴る物語は初めて。街の匂いすら伝わるような鮮やかな筆致。ウィーン、プラチスラヴァ、クラクフ、プラハ、リュブリャナの石畳の感触を思い出し、街中に佇む思い。同時に異郷の魔法にかかるように、人々との出会いを幻視する。会ったかもしれない人、会えるかもしれない人、かつて居た人。カフカやトーマス・マン、折口信夫の言葉もまた、流れては去り。『本に読まれて』の中で須賀敦子さんも、本書からローマのゲットーを想起していた。逍遙の書。
2019/09/25
micamidica
須賀敦子さんがこの本について書評を書かれていて、こころ惹かれる作品だなと思って読み始めました。ウィーン、ブラチスラヴァ、クラクフ、プラハ、リュブリャーナ、5都市をそれぞれ舞台とする短編集。現実にはありえそうもないことを、プロフェッサーと呼ばれる「私」の目を通して描かれます。どこか幻想的な、でもまちの空気はしっかりと感じられて。実際に訪れたことのあるクラクフ、プラハの章はおもしろいくらいに物語の世界に入り込んでしまいました。つい最近亡くなったアンジェイ・ワイダ監督の名前も出てきていたなぁ。
2016/10/19
ぽよぽようと
大きな山はないけどすっきりまとまっていて深い知性を感じさせる。一篇にひとつくらい、本筋とは関係ないがはっとさせられるような金言めいたセリフがある。私は結構好きです。
2015/12/08
fuchsia
ちょっと謎めいてブラックな匂いも漂わせつつ、ユーモラスな語り口が名人芸。ああ、プラハとかウィーンに行きたくなってくるなあ
2005/01/01
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