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タイムスリップ・コンビナート

タイムスリップ・コンビナート

タイムスリップ・コンビナート

作家
笙野頼子
出版社
文藝春秋
発売日
1994-09-01
ISBN
9784163151205
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タイムスリップ・コンビナート / 感想・レビュー

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Koichiro Minematsu

ほとんどが一人称での話。仮眠空想の中で昭和と平成を、東京と地方を、行ったり来たりしている。 これも私の記憶だよね。

2024/10/05

かふ

『タイムスリップ・コンビナート』は東芝工場につながる鶴見線は東京の果て(鶴見の湾岸)の「海芝浦」という東芝工場と繋がている。去年の今頃「鶴見駅の挑戦状」という鉄道オタが喜びそうな企画があったのだが、それがまったく『タイムスリップ・コンビナート』の場所と重なっていた。マグロから呼び出されるというのはゴーゴリ『鼻』のような滑稽譚を連想させた。最後の『シビレル夢ノ水』はカフカ的世界をよりおぞましくした小説だった。『タイムスリップ・コンビナート』は喪失した時間の物語でもあり味わい深い。稲垣足穂の近未来小説の影響も

2023/12/24

踊る猫

スジだけを要約すると夢の記録を描いているような(まさに主人公が夢現の状態で過ごしている日々も描写される)作品集だ。だが、その「夢」を笙野頼子氏は恐るべく冷徹な視点で描いている。文章に無駄や余剰がないというか、硬質/ソリッドな印象を受けるのである。それでいて初期の作品のあの異様な読みにくさがなく、こちらを自在に引きずり込んでいくテクニックを自家薬籠中の物としていることが伺える。藤枝静男の持つ狂気のヴィジョンを笙野氏なりに変奏した、しかし猿真似/エピゴーネンでは決してない、そんな印象。吉田知子氏に通じるものも

2016/04/14

u

「タイムスリップ・コンビナート」「下落合の向こう」「シビレル夢ノ水」を収録。いずれも妄執と現実が輪郭を溶かして混ざり合う作風で、芥川賞受賞のぶっ飛んだ表題作ももちろんいいのだけど、私的には他二篇、とくに「下落合の向こう」のバランスがよかった。最初から妄執のほうが現実を食い気味で、テクストが書かれることによってどんどんそれが現実を圧倒していく……のだけど、最後にまた絶妙な拮抗に収束される。作中にもでてくるけど、室内プールのようなふわふわ感、非現実感だった。癖になりそう。/海芝浦駅に行きたくなった。

2017/05/28

石川さん

夢と現実の区別があいまいになる小説は、設定やレトリックにかなりのセンスが問われると思うんだけど、私にはこの小説にそのセンスが感じられなかった。書かれたのが1994年であり時事的な事象が古くて陳腐化しているのか、単に私の感性と合わないのか……。表題作より、むしろ「シビレル夢ノ水」の方が日常が徐々に崩壊していくさまの狂気が光っていて(ただし後半あたりまで)いいと思う。全く本筋と関係ないけど、沖縄会館と海芝浦が意外に近い(確かにどちらも鶴見だし)ことを知れたのは収穫でした。

2016/02/18

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