1809
1809 / 感想・レビュー
butapenn
仏軍占領下のウィーン。仮設橋架橋にたずさわる仏軍工兵隊大尉バスキは、殺人事件を皮切りに、ナポレオン暗殺計画に否応なしに巻き込まれていく。破壊の欲望に身をゆだねるウストリツキ公爵と、冷静さの仮面の下に熱く自滅的な衝動をかかえているバスキは、ひとつの魂の裏表のようだ。
2013/01/06
しもふさ
退廃的な雰囲気が漂うこの小説の背景として、1809というナポレオンの栄光に影が差しているこの年をあてたのには作者の諸々への愛を感じる(1806とか1812とかではなく)。年号だけでゾクゾクできる人種というのは確かにいるのです。
2015/08/30
はっぱ
ナポレオンが、大砲と銃で版図を広げようとしている時代。オーストリア宮廷の中で不遇の公爵様と戦線拡大を望まない仏軍将校との陰謀に巻き込まれるパスキ大尉。公爵が大尉にゲームを始めたは、クリスティアーネを守るためと、大尉の中に自分を見たからだろう。名誉以外は全て持つ賢い魅力的な公爵と野性的で滾る激情を秘める果断な男パスキ大尉。イグナツ氏を含む彼らの簡潔された会話の中に含まれる意味を読み解いていくのが楽しく、一度読んですぐ再読反芻。作者の賢さと才能に大変惹かれる。
2013/02/16
彩也
恋・冒険・陰謀という一見オードソックスなプロットと見せかけて、実は一筋縄ではいかない物語。隠微/淫靡な人間関係と、冷ややかな闇の濃さに、うっとりする。優雅なる陰謀。一方で、冒険小説としての読ませどころもあって、アントワーヌが爆発物を解除する様子は息を詰めて読んだ。エッセイによると、著者はこれを書くためにパリ国立図書館に通い、兵士たちの手記を読んだようだが、その知識がウンチクとして散りばめられるのでなく、時代の空気として結実している。凄い。
2011/01/18
Hiroyuki Ohashi
ナポレオン、工兵、貴族、暗殺、そして失礼ながら女性作家、作者の天才を具現化した一冊。
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