誕生日の子どもたち
誕生日の子どもたち / 感想・レビュー
ケロリーヌ@ベルばら同盟
少年、少女のイノセンスをテーマに書かれたトルーマンの物語六篇を村上春樹氏の流麗な翻訳で堪能できる贅沢。幼い日の作者の姿が色濃く投影される『ぼく』は純真無垢であり、冷静な観察・記録者でもある。遠い親戚に預けられ、祖母ほどに歳の離れた従姉をただ一人の親友として育つ少年の視点で語られる誕生日や感謝祭、クリスマスの物語は、その特別な日を彩る美しい場景と共に、不穏な気配をも内包する。黄色い薔薇の花束に突進した美しい蝶、若者の手の中で夕暮れの帳に向かって咆哮をあげる燃え盛る大輪の菊の花。古い葉書は今も時の雲間を漂う。
2020/01/16
依空
6編を収録した短編集。抽象的で分かりにくい話もありましたが、カポーティの文体なのか、それとも村上氏の文体なのか、とにかく目の前に情景が浮かぶような描写と文体が心地良い1冊でした。純粋で傷付きやすく、そして無垢ゆえの残酷さを併せ持つ子どもたち。私たちがかつて持っていたものを描き、かつ無垢と危うさのバランスが描かれているのが、この本の魅力なのかもしれません。「おじいさんの思い出」のような物語は現代日本に置き換えても当てはまるものがあり、時がもたらす変化をひしひしと感じる今、切なくてたまりませんでした。
2016/12/07
さぼ
冬になったら読みたくなるなるカポーティ。どうすれば子供時代の繊細な感覚をこれ程まで綺麗なまま保てるのだろう。今回初めて読んだ「おじいさんの思い出」は小さな頃の自分の体験と重なって思わず電車の中で涙ぐんでしまった。読み進めていくうちに切なさと共に幼少期の無垢な気持ちを取り戻せるところがカポーティの小説の素晴らしいところだと思う。そしてあとがきにて何故ここまで琴線に触れるのかを的確に解説してくれている村上春樹を初めてすごい人だと思った。(ハルキストの方ごめんなさい)
2019/11/17
けいと
「無頭の鷹」がやっぱり好き。続けて「遠い声、遠い部屋」を読みたくなる。どこを探しても見つからない。
2014/04/16
ふうふう
★★★★☆子ども時代のある時期をアメリカの山村で過ごす主人公。複雑な家庭事情があったにせよ、あたたかな明るい愛情にあふれた数年間があってよかった。スックのテニスシューズが鳴る音、クイーニーが銀紙でできた天使に食いつこうとジャンプする光景。バディーの暮らしを読みマイライフアズアドックを少し思いだす。しかし、子どもたち同士の交流が少ないため、より個人的な甘美さが凝縮され完成された閉じられた場所という印象。
2019/03/11
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