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西日の町

西日の町

西日の町

作家
湯本香樹実
出版社
文藝春秋
発売日
2002-09-12
ISBN
9784163211909
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西日の町 / 感想・レビュー

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ゆうゆうpanda

『夏の庭』『ポプラの秋』から受けた印象。老人と子供は相性が良い。そして老人の務めは正しい順番で死んでいくこと。老人は子供に「死」を見せる教師なのだ。『西日の町』はその集大成とも言える。「僕はそのとき、てこじいの顔が変わるのを見たのである~」から続く9行。今まさに死んでいこうとする瞬間をスローモーションで描く。それはまるで詩。自然の中にある美しい刹那を人もまた身の内に持っている。浮浪者同然で転がりこんで来たてこじい。彼が残したしるしは、西日差す小さなアパートの壁の汗染みだけではない。心に沁みる命という残像。

2016/07/07

アン

母と僕の暮らしに、突然転がり込んできた祖父のてこじい。てこじいの人生は、東の空の日の出に始まり、様々な空模様を経て、西日の当たる町で終わりを迎えます。てこじいの不器用な愛情は、夕焼けのように淡く心に沁み、切ない程。「生」と「死」を見つめた、かけがえのない、ひとつの家族の物語。

2018/12/26

めしいらず

落ち着いた語り口にすーっと引き込まれる。親愛も憎悪も含めて、親子の関係はやっぱり分かち難い。表向きは良好とは言えなくても、心の奥底ではちゃんと父と子。西日射し込む安アパートの一室、まるで自身に罰を与えるかのように一人壁にもたれ過ごし、父は何を思っていたのだろう。娘の複雑な思いは、夜更けの爪切りに表れる。母の弟の言動が、2人の関係性、感情の機微を際立たせる。ラストの病室のシーンの美しさ。ゆっくりと身体に沁み渡るような優しい物語。

2012/12/29

Atsushi

僕が母と二人で暮らすアパートに突然現れた母方の祖父「てこじい」。これまで散々家族に迷惑をかけてきた。母も娘として許し難い気持ちを持つが、てこじいがバケツ一杯になるまで採ってきたアカガイ、てこじいが入院する病院へ母が毎日持参したしじみの味噌汁。やはり、過去はどうであれ、親娘の絆は断ち切れないと思った。「長いこと、お疲れさま」臨終の際に娘として囁いた一言に父を思う気持ちが伝わり、胸が熱くなった。

2017/07/17

じいじ

読友さんからの献上本。勿論初読み作家。ひっそり母子で住むアパートにやってきた祖父「てこじい」、3人の生活が始まる。心の裡とは裏腹に祖父に冷たく当たる母、てこじいと孫とのやり取りが丁寧に、優しい筆致で描かれた佳作の家族小説。この作品の三人の家族設定が、今の私の環境にピタリと重なり感無量の読後感になった。てこじいと孫の会話ににんまりしたり、目頭が熱くなった。おすすめ度:★★★(満点)

2014/09/05

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