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弱法師

弱法師

弱法師

作家
中山可穂
出版社
文藝春秋
発売日
2004-02-26
ISBN
9784163226408
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弱法師 / 感想・レビュー

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おしゃべりメガネ

中山さん作品、おそらく3作品目だと思います。インスタでみかけて気になり、手にした作品でしたが思ってた以上に楽しめました。3つの話からなる短編集で表題作ももちろん素晴らしいのですが、個人的には一番ボリュームのあった女性編集者の話が印象的でした。表題作にはなんともいえない、ちょっと危なっかしいセクシーさがあり、他の作品には人の性や生に対するまっすぐな情熱が見事に綴られています。恋愛小説でありながら、どこか追い詰められたかのような究極さが感じれます。3つ目の作品では、よしもとばななさん風なカラーを感じました。

2022/12/10

真理そら

死と隣り合わせの日々を送る盲目の少年の妖しさと純粋さが切ない『弱法師』。優秀な編集者の百合子と新進気鋭の作家・深町の研ぎ澄まされた愛を描く『卒塔婆小町』(この作品はそれぞれの名前が種明かしになっているのが面白い)タイプの違う二人から愛されて儚い生を終える女を描いた『浮舟』。『卒塔婆小町』は墓場での出会いがそのままワキ登場っぽいので舞台として観たい気がした。「レスリー・チャンに捧ぐ」という献辞から深町の雰囲気や結末のイメージがわく映像的な作品集だった。

2024/02/29

よこたん

“あなたが不可能な愛のために泣くとき、ぼくもまたあなたへの不可能な愛のために泣くでしょう。あなたが孤独にふるえる夜は、僕はあなたを暖めるために小説を書くでしょう。” 恋い焦がれ、恋に憑かれ、命を削るようにして約束の百本の小説という形の恋文をあなたに。お能の「卒塔婆小町」の物語が薄衣のようにまとわりつく中、あの結末に向かって進んでいくのを黙って見守るしかできないのが辛かった。思いを遂げられずこの世を去る者に、心の幾分かを持ち去られ、後に残され虚ろに掌を見つめるしかない者。他二篇「弱法師」「浮舟」もまた然り。

2017/07/09

*maru*

中山作品3冊目。能の演目をモチーフとした3篇の愛の物語。妖怪じみたホームレスの老婆が静かに語る恋物語。新進気鋭の若手作家が編集者に捧げた100篇の物語と一通のラブレター『卒塔婆小町』の余韻を引き摺ったまま『浮舟』に進んだら、こちらはもっと凄かった。伯母からの無条件の温もりと両親の過去。その愛の深さに圧倒された。叶わぬ恋は、雨の飛沫のように美しい。狂おしい愛は、細胞から滴る蜜のように甘ったるい。夢を、欲望を、生と死を。骨が粉々に砕け、肉体がすべて溶けきるまで、あなたを愛したい。あなただけに愛されたい…。

2018/02/08

めしいらず

3編からなる中編集。「卒都婆小町」が良い。書き出し2頁が美しい。ストーリーや人物設定は苦手とするメロドラマだ。が、全編を覆うむせ返るような切迫感、熱情と冷酷の鬩ぎ合い、痛々しいまでの純粋さに搦め捕られ、時間を忘れさせられる。人物設定が2人のキレイな部分だけでなく、抱える闇や俗な部分にも焦点が当てられているのが良い。そこをもっと掘り下げてくれたら尚良かった。

2013/01/31

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