パライゾの寺
パライゾの寺 / 感想・レビュー
りー
短編集。「オール読物」連載作品。著者が宮本常一さんの作品や、郷里の昔話、郷土史、新聞の記事などに触発されて書いた作品。江戸末期~昭和初期頃の土佐に関するお話が多い。私にはコントラストが強すぎ、楽しく読み終わる感じではなかったけれど、たまには良い。
2023/03/04
ラグエル
「切支丹であっとは、いつでも天主さまの思し召しに従う覚悟ができとるということさ。そいは拷問を受け、火炙りにさるっことでもあっと。ばってんそん試練こそが、おいたちの霊魂をパライゾに運んでくれる救いの手よ」だから、弾圧しても増え続けるわけですよ。踏み絵を踏みつけた罪を赦される、「コンチリサンの祈り」という「おらしょ」ってのがあるんですね。日本史の授業聴きながら、そういうのなかったのかなーとか思っていたんだけれど。
2011/08/04
にゃも
以前、時代劇チャンネルにハマっていた。その時に見た『子連れ狼』(拝一刀はもちろん萬屋錦之助!)で隠れキリシタンが出てくる回があった。話の内容は忘れてしまったが、幼い杉田かおるが口ずさんでいた歌が今でも頭から離れない。パライゾの寺へ~参ろぉぉぉ♪なんとも不思議な節回しとパライゾという言葉…あぁ、たまらん!と、最近になってこの本を見つけた。このタイトルである。読むしかあるまい。宮本常一の著書を彷彿とさせる内容で土俗的世界にどっぷりひたることができて大満足。秀逸はやはりタイトルの話。とても哀しくて美しい…。
2016/08/03
tama
図書館本 坂東シリーズ これは大変佳い作品と思います。アホな男はいつもの通りそこここに(「虫の声」「六部さま」)出ており、対する女のしたたかさは更にくっきりと。短編集ですが基本全部つながっており大きな流れは最後まで残っています。「パライソの寺」はユダが死ななかったらという物語にも思えます。「朱の棺」は息子が夢枕に立ってからの両親の心の解放が好くてちょっと泣けるほど。もっと評価されてよい作品と思います。参りました。
2014/08/16
mari
幕末〜維新、太平洋戦争と激動の時代に翻弄された庶民の濃密な記憶の短編集。坂東眞砂子ならではのグロテスクでエロチックな味付けはいつも通り。土佐弁と長崎弁がそれをいっそう濃厚にさせる。好きと嫌いが極端に別れる作家さんですね。
2010/12/12
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