ワンちゃん
ワンちゃん / 感想・レビュー
そうたそ
★★☆☆☆ 文学界新人賞受賞作を含む二編を収録した作品集。外国人初の芥川賞受賞者として一躍有名となった作者だが、この作品もデビュー作ながら、第二言語でここまでのものを書けるとはと驚いてしまう。作者に敬意を払う上では他の作家と同基準で考えるべきなのだろうが、どうしてもその驚きが先行してしまう。とはいえ、やはり読んでいて所々で「ん?」と思い躓いてしまう文章が見られた。一方で、中国人ならではの表現というものもあったわけだから、そういう意味では日本人作家には書けない唯一無二の作品であるんだろうと思う。
2016/01/27
kaoriction@感想は気まぐれに
働き者のワンちゃん。紆余曲折を経て、日本で旦那と姑の面倒をみながら、農村独身男たちを中国に連れてお見合いツアーを仕切る。ユーモア溢れる、というよりも、結構シビアな現実を行ったり来たり。頑張るワンちゃんだけれど、別れた息子の「あんなに働いて、何か良いことがあった?」が言い得て妙、真実なのかもしれない。「踏んでいる町こそ様々であるものの、ほかに変わるものはあるのだろうか」異国で暮らそうが、生まれた国で暮らそうが。地に足をつけて生きることの意味…ムツカシイですね。併録の『老処女』も然り。楊 逸の世界、深いな。
2014/10/02
Fondsaule
★★★★☆「ワンちゃん」「老処女」の二編。以前読んだ「時の滲む朝」が良かったのでこの作品も読みたくなった。中国から日本に来た女性の気持ちの動きがよく伝わってきた。とてもよかった。
2021/01/24
むつこ
中国出身の作家(楊)さん、お初です。中国からやってきた女性2人が主人公の中編2つの小説。題名になっている「ワンちゃん」は、妻を求める日本人男性の仲介業をしながら義母の介護をするお話。「老処女」は、結婚するまで清い身体でいるのが当たり前と育ちながら45歳になってしまったお固すぎる女性のお話。大陸の女性の考え方ってわかるようでわからないような・・・共感するには時間がかかりそうです。
2015/01/20
くくの
「ワンちゃん」と「老処女」の二編。どちらも女性の生きづらさ、他国で暮らすことの孤独が描かれる。「ワンちゃん」は中国にも日本に居場所がない。男運のなさだけでは片づけられない難しさがある。「老処女」にしても、昔の価値観との葛藤とその脱却に一瞬の希望を見るが、すぐ先にある絶望が訪れる。心の拠り所を失った人はどうなっていくのか。以前とは違う、深くなった孤独とどう付き合っていくのか。すごく悩ましい。それらを見ないようにして生きるしかないのだろうか。それができるのだろうか。考えさせられる。
2021/07/13
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