還るべき場所
還るべき場所 / 感想・レビュー
文庫フリーク@灯れ松明の火
山岳小説の可能性はどこまで拡がるのだろう。単独無酸素登頂と真逆の公募登山。潤沢な酸素と食料、設置された固定ロープをつたってプロのガイドに踏ませてもらう頂上。商業化された登山がこれだけの危険を秘め、緊迫したシーンになるとは。笹本さんの豪腕に脱帽。神津社長の名セリフに痺れ、引き込まれる。アイゼン要する程ぎっちり詰まった文章。山々の名前やルート、登山用具に登山用語が常識とばかりに書かれるので、できれば一般向けに写真や解説欲しい所。これほどの山岳小説、描ける作家さんは滅多にいないはず。巡り逢えて幸せです。
2011/10/13
ntahima
夢枕獏は『神々の山嶺』の後書きで「これだけの山岳小説はもう恐らく出ないであろう」と書いたが本作は充分に肩を並べ得る内容である。エベレスト南西壁冬期無酸素単独登頂というスーパー・アルピニズムの見果てぬ夢を描いた夢獏に対し、本書では対極的な公募形式の商業登山をテーマに選んでいる。又、因縁の山・象徴の山としてのK2は常に物語の遠景にあるものの、舞台は八千米峰としてはやや地味なブロード・ピーク、固定ロープべた張りの一般ルート。時は夏。ミステリ的要素や敵役の配置を一切排したピュアな山岳小説。男達の再生と友情の物語。
2011/09/22
ちゃんみー
登山用語がわからなくっても、なんとなくで読んでしまおう。8000m級の登山なんて死にに行くようなものじゃないか!登っても降りるのが大変じゃないか!と思うのですが、そこが山登りの醍醐味なんでしょうね。あ〜、それでこのお話なんですが、まず馬鹿野郎な三人に腹が立ったのと、聖美のその後がハッキリしてよかったのと、会社会長のバイタリティの凄さかな。
2014/02/22
きりこ
本格的かつストレートな山岳小説でした。 後半は様々なアクシデントに見舞われ乗り越えていく所にスリルがありました。 かなりの長編でしたが、人間模様も上手に描かれていて飽きさせなかったです。 最後に事故の真実が明らかになり、心の重荷から解放された翔平はようやく立ち直り…。 初登頂を成し遂げたに違いないのに痕跡を残そうとしなかった聖美は気高い精神の持ち主だと思いました。 凛々しく命を全うしたこの女性もそうですが、翔平や神津達の勇気ある行動にも感動しました。
2011/09/30
しょこ
読みごたえのある一冊だった。本格登山なんて経験もなく、山岳小説を少しずつを読むようになり知識を増やしている私。専門用語に手こずったけど、十分楽しむことができました☆登攀という夢に、長期間を費やしてコツコツと準備を進めるクライマーたちの情熱はすごい!それでも、人間の力では掌握し得ない大自然の中、限られた物資、知識、情報での登山は、常に死と隣り合わせで、特に終盤はハラハラの連続。窮地に陥った時こそ、人間の本質がみえるようで、神津さんの考え方や行動力が素晴らしかった。“希望は向こうからは歩いてこないー”でも…☆
2016/01/24
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