時が滲む朝
時が滲む朝 / 感想・レビュー
遥かなる想い
2008年芥川受賞作。中国の民主化、天安門事件から北京五輪直前までを描き、日本語を母国語としない作家が初めて芥川賞を受賞したというので、少し期待したのだが..天安門事件前後の動乱をもう少し書き込んで欲しかった。文化大革命の悲惨な状況を描き切った、ワイルドスワンのような作品を期待していたのだが。作品の中で、尾崎豊の「I Love You」とか 一時ブームとなった育毛剤「101」が出てきたのは懐かしかったが。
2011/02/11
ヴェネツィア
2008年上半期芥川賞受賞作。著者の楊逸は中国ハルピン生まれ。初めて日本に来たのは23歳の時。芥川賞75年の歴史の中で、日本語を母語としない作家の初受賞だろう。小説は主人公の浩遠と親友の志強が、受験勉強の末に秦漢大学に合格し、星雲の志を持って秦都に向かうところに始まる。漱石の『三四郎』を思わせる。間もなく彼らは中国の民主化闘争に参加し、やがて天安門事件を迎える。物語の後半は日本が舞台となるが、そこでの若い在日中国人たちの持つ希望や挫折が実によく描かれている。闘争から10年後のエンディングはなんとも悲しい。
2013/06/17
コットン
11年前の芥川賞受賞作。帯には『天安門事件前夜から北京五輪前夜まで 中国民主化勢力の青春と挫折』とあり、テレサ・テンや尾崎豊の歌の効果的引用、民主化・資本主義の考え方が個人に与える影響、最後の甘先生とのさらっとした魂のプレゼント交換など印象的。ノンポリですが、実社会では今年の香港でのデモと考え合わせると十年ひと昔と言うが何も変わっていないのが、もどかしい!
2019/08/26
おいしゃん
【芥川賞作品】芥川賞の中では抜群に読みやすく、珍しく感情移入できる本だった。中国の奥地で生まれ、日本に移り住んでからも、中国の民主化運動に携わる主人公。彼を取り巻く人、世界、家族の様子が、150ページの中に濃密に、しかしさりげなく描きこまれている。世や自らを取り巻く環境は変われど、心は変わらない。そんなことを教えてくれる本だった。
2015/07/11
おくちゃん🍎柳緑花紅
日本語を母語としない作家として初の芥川賞受賞作品。喜怒哀楽の怒哀の感情が執筆中強く重く襲ったという。浩遠が作者本人の事なのではと感じながら読んだ。天安門事件、赤でも黒でも無く無名な者の方が場合によってはリーダー以上に時代に翻弄されたり辛い運命を強いられたりする。中国に限らずどこの国にも....最後に作者は言う。絶望でも、時が過ぎ場所が変われば、希望に変えることが出来た。と。
2014/09/11
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