猫を抱いて象と泳ぐ
猫を抱いて象と泳ぐ / 感想・レビュー
ヴェネツィア
実に奇妙なタイトルなのだが、読後はそれがまことに適切であったことに思い至る。これは喪失と別離の物語。冒頭は象のインディラの喪失に始まり、そして、そこから数々の別離が描かれていく。マスターとの、猫のポーンとの、ミイラとの、老婆令嬢との、祖母との、キャリーバック老人との…そして、最後は私たち読者とアリョーヒンとの。全編にわたって静謐さが支配する淋しさに満ちた物語だ。前田昌良のカヴァーも作品のムードにあっている。なお、チェスに詳しければ、さらに本書の楽しみも大きいかもしれない。
2012/07/20
風眠
じんわりと哀しいのです。それと同時に温かいもので心が満たされていく感じもするのです。「あわてるな、坊や」、マスターの言葉がこの小説全体を通奏低音のように貫いている。「尊さ」とは何かを、静謐な文章と少し不思議な世界観で表現されている。チェス盤という小さな盤上(いや、盤下か。)に収まりきらない世界を泳ぐ、リトル・アリョーヒンの生涯。登場人物は皆どこかグロテスクだけれど、見え隠れする覚悟と真摯さが美しい。こんな風に、ひとつのことに生涯を捧げて生きることができたなら、それはきっと幸せ。棋譜という生きた証を残して。
2014/06/15
takaC
やっと読めた!そしてすごく気に入った!猫を抱いて象と泳ぐってそういう意味だったのね。オススメ。
2011/07/31
射手座の天使あきちゃん
美しい棋譜を綴ることに生涯を捧げたリトル・アリョーヒン 常に影の存在で、禁欲的な生活でも、あなたは幸せでしたか!? うーん、タイトルもだけど、感想も一言ではとても説明出来ません。もう一度読んでみます。 でも唇の脛毛の記述は繰り返し必要なの?(笑)
2010/09/19
美紀ちゃん
名作。キレイな雰囲気。チェスは憧れてやったことがあるけれど、その奥深さや美しさが素敵な文章でゆっくり描かれていてとても良かった。廃バスで、海底チェス倶楽部で、老人ホームで、不思議な出合いがあり良い居場所だった。またチェスをやってみたいと思った。
2012/08/12
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