骨の記憶
骨の記憶 / 感想・レビュー
utinopoti27
東北の旧家の嫁に届いた宅配便は、かつて失踪した父の頭蓋骨だった。ミステリ感満載のプロローグが衝撃的な物語は、昭和30年代の集団就職で上京した主人公の、サクセスストーリーへと軸足を移します。成り上がってゆく少年と、没落してゆくかつての友人の間には、骨にまつわる過去のある秘密が・・。本作は、緻密な取材と圧倒的な構成力を駆使して綴る、復讐と因果の人間ドラマだ。激動の昭和を背景にした人生の光と影。富と名声では決して癒されることのない孤独。愛憎渦巻く復讐の連鎖。この救いなき物語の行き着く先は・・。圧巻の長編でした。
2019/05/06
ともくん
まるで、ひとりの男の大河ドラマを見ているようだ。 底辺から這い上がっていく。 だが、その間には他人になってしまっていた。 後戻りできない道を、ただ黙々と歩いていく男。 偽りの人生をを歩み、人生の幕を閉じるために、男がとった行動とは何だったのか。
2021/06/12
も
予想していた話とは全然違ったけれど、すごく面白かった。一郎の成り上がり物語。原宏一さんの「握る男」をちょっと思い出しました。あることをきっかけにどんどんのし上がっていく一郎を見るのも面白かったけど、後半のじわりじわりと首を絞めていくような復讐がぞくぞくしました。こういうのすきです。あの後どうなったのか気になる終わり方ですね。
2015/10/06
クリママ
岩手県南部の村、主人公たちが生まれたのはまだ戦時中だと思われるが、戦争については触れられていない。中学の同級生の3人。貧しい暮らしの一郎は、集団就職で東京へ。苦労の中の心ならずもの悪運。経済小説のようでもあり、サクセスストーリーのようでもある。が、激しい復讐の物語だった。彼が故郷に戻り、家族を持ち、つましくも穏やかに暮らしたとしたら、それはつまらない生き方なのだろうか。そんなことを考えた。この本の中には、幸せな人などいなかった(一人いたけど)。
2019/06/08
キムチ
楡さん、はずれなかった。昭和を体現する男の光と影、上りつめて足りなかったのは・・心・・か。 つめに巧く行き過ぎの所があるのは愛嬌で、まさに男 一郎のモノローグ。それが強過ぎる余り、清枝 弘明 冬子さらに周囲の者の存在までノンアクティヴに感じられる。大円団のくだりは些かマンガチックな情景。ビジュアルにすると感極まれりはこうもなるか・・一郎に後光が射して行く感じ。少年期の屈辱の怨念は周五郎でもあったように、常人には度し難いのかもしれない。弘明清枝夫婦にもっと記述が欲しかった。
2014/01/24
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