岸辺の旅
岸辺の旅 / 感想・レビュー
みも
湯本さんについてはあまり詳しくないけれど、こういう作品も書かれるのですね。僕だけかもしれませんが、村上春樹さんの匂いを嗅ぎ取りました。繊細なタッチと薄い空気感。展開される事象には些か唐突感があるけれど、決してそれは強引な筆遣いではなく、微妙な違和感を易々と乗り越える。そこには雲のじゅうたんにでも寝そべっているような、いつまでもそこに留まっていたいような心地よさがある。夫婦とは奇妙なもの。傍らにいない事に気づいた時、心は乱れ、その残像を探り、圧倒的な不在に言葉を失う。さて妻は、どちらの岸辺にいるのだろうか。
2020/08/24
おくちゃん🍎柳緑花紅
夫が失踪して三年、生きているのか?死んでいるのか?夫の好きな白玉を作る台所に夫が現れる。しかし彼はもう死んでいるという。二人で旅を続ける中で気づく事、望むなら死者と生者は繋がれる。しかしやはり別れの時がくる。「行かないで」の声が切ない。血の繋がらない者同士が縁あって夫婦になるって実は凄い事なんだと、夫婦の別れというものが心の奥をチクチクと刺す。いつか必ず別れが来るのだ。文中の[一度死んだことも、いつか死ぬことも、何もかも忘れて今日を今日一日の為だけに生きるそういう毎日を続けていく、ふたりで]が心に残る。
2015/07/18
mike
3年前に突然失踪した夫が現れた。「出かけよう」と言う夫に付いて妻は旅に出る。それは夫が死後辿った軌跡であった。恋愛小説だが、美しい絵画を眺めているような、雲を掴むような柔らかなファンタジー。あぁもっと刺激をください。
2023/03/08
あつひめ
悲しくても辛くても愛しい人を探すために泣きながらでもご飯を食べる。それが残された人のやるべきことなのだろう。残された人は消えた人の分まで時を背負わねばならない。そうやって、自分の心を慰めるように生きるのだろう。
2015/11/15
はる
行方不明だった夫が帰って来た。ただしその存在は…。静かで悲しい二人の旅の物語。抽象的な描写が多く薄闇を彷徨うな気分。純文学的な色合いが強い印象です。二人だけの世界になかなか共感出来なかったのですが、ラストは綺麗でした。もしかしたらすべては夢だったのかもしれない…。
2017/02/28
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