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存在の美しい哀しみ

存在の美しい哀しみ

存在の美しい哀しみ

作家
小池真理子
出版社
文藝春秋
発売日
2010-04-14
ISBN
9784163291000
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存在の美しい哀しみ / 感想・レビュー

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新地学@児童書病発動中

初老の女性が、娘に「あなたには異父兄がいる」と話すところから物語が始まる連作。理屈や法律では割り切れない二人の人間の間にあるつながりを、作者は陰影深く描いていく。それはつながりというより、抜き差しならない絆と言っても良いかもしれない。一番気に入ったのは三章の「我々は戦士だ」だった。この物語が示しているように、生きている人はは多かれ少なかれみんな戦士であり、人間関係や仕事などでぼろぼろに傷ついてしまっても、その傷は後に勲章になるのだと思う。

2014/02/03

美登利

2時間半、夢中で読んだ。ほぼ身動きもせずに。小池さんの小説は初めてかもしれない。十数年前ぐらいに恋愛短編集などで読んだことはあったかもしれない。上質の恋愛小説だった。20代の登場人物たちにも自分と同年齢の男女にもどこも似てるところはなかったけれど、激しく惹き込まれてしまった。1人の女性から繋がる縁の物語で現実離れをしているようでいて、妙にリアルにも感じられた。恋愛に性行為は不可欠だけれども、そこに愛が無くても成立することもある。人間だから悩み苦しむのかな、けものならば本能の赴くままだから。

2018/01/20

あつひめ

背景に映る景色が美しく、より一層物語の幅を広げているような気がした。登場人物たちが物静かで熱くない・・・あまり温度を感じない人たちで、感情を貯め込みいつ爆発するんだろう?なんて思いながら読み進めた。でも、爆発なんてなくて物静かに物語は進む。そこが普通とは違うんだろうな。苦しみや寂しさ、孤独とかいろんなものを抱えているのに家族同士があまりに繋がらない。心を開ききらないように感じたのは私の読みが浅いのか。これ以上の感情を発しないために人は殻にこもるのだろうか。小池作品、やっぱり美しくまとまっている。

2012/08/25

ゆみねこ

何とも素敵な物語でした。じんわりと余韻を楽しみたくなる。幼いわが子と離れざるを得なかった母奈緒子の哀しみ。奈緒子の犯した過ちより、そうせざるをえなくなった原因を作った芹沢を責めたくなった。介護施設で働く芳雄の話が良いアクセントになっていて良かった。プラハの美しい町並みと、チェロの音色を思い浮かべながら読了。

2013/12/29

ラテちゃん

語り手の異なる連作短編。視点が変わることで登場人物たちが立体的になってくる感じが好き。どんな人間もその人なりの苦難を抱え生きている。人間の多面性は愛するもの同士でも真にわかりあえないという絶望感を与える。一方自分ですら気づいていない一面を他者とのかかわり合いの中で見いだす驚きと喜びも多面性によるものなんだろう。最終話でしっとり感動する綺麗なストーリーでした。

2017/11/10

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