南部の慰安: 福田和也文藝評論集
南部の慰安: 福田和也文藝評論集 / 感想・レビュー
トックン
タイトルにある「南部」とはアメリカ南部のことで、慰安はそこに注ぐ陽光の「衝動と倦怠」を指す(元はバーボンリキュールの福田独自訳らしい)。本書は、保守思想の路線変更を図る。福田恆存的「生活」から江藤淳的「美」へ。大正生まれ神田育ちの福田の言う近所のソバ屋と保守がつながる素朴な時代から、足場(伝統)を喪失した(喪失感すらない)時代に保守する対象は、生活を殲滅する「美」しかない。パンク的衝動に基づく「言葉の政治」を仕掛けることで仮初の「伝統」を捏造せんとする姿勢は、左派論壇でのかつての大塚英志に似る。
2018/03/17
ミスター
馬鹿馬鹿しいほどに空疎な言葉で驚いてしまったが、もともとわかっていたことを再確認させられた。さいきん読んでなかったから忘れてしまっていたが、そうだ。批評とは空疎な代物なのだ。言葉とはなにかと探ろうとする言葉を批評するものとしての批評は何物もない空虚なポッカリと空いた世界をいずれはみいだしてしまうわけで、そこからしか批評は生まれない。己の空虚さを隠蔽するエゴイズムとそのエゴイズムがあたかも知であるかのような勘違いを引き起こすことを福田は何よりも批判しているのだ。我々は自分のエゴイズムを肯定しなければならない
2019/08/15
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