「驟り雨」市井小説短編(三) 藤沢周平全集 第三巻
「驟り雨」市井小説短編(三) 藤沢周平全集 第三巻 / 感想・レビュー
ehirano1
「怠け者」について。小説を通して『組織における怠け者の役立て方』を改めて学ばせていただきました。どんな組織にも「どうしようもない怠け者」はいます。この怠け者を切るのは簡単ですが、パレートの法則によってまた新たな「怠け者」がゾンビのように生じます。この「怠け者」は切ってはいけません。むしろ、余人には計り知れない何らかのスキルを持っていると信じて、そして我慢の素振りを決して見せることなく皆と同等に扱うこと。本編の女将がそう教えてくれたように思います。
2023/07/22
モトラッド
★★★★★ いわゆる市井物の短編を36篇収録。第一巻に30篇、第二巻は21篇、市井小説の合計は87篇という数になる。「驟り雨」から始まり「遠ざかる声」で終わる第三巻を読み終わって、正に感無量の心境である。一篇読むごとに「上手いなぁ」と感じ入る事、しきり。特に『夜の道』『おさんが呼ぶ』『初つばめ』などがお気に入り。心身ともに江戸の街に置き去りにされたような、ウットリするような読後感。暫くは、そのまま夢を見ていたいような心持ちである。さて、第四巻は“士道小説集その1”との事。楽しみ楽しみ…続けて参りましょう。
2020/04/21
星落秋風五丈原
「はしり雨」物語はすべて闇の中でおこる。盗人が神社の軒下で雨宿りしながら目の前の大津屋に忍び込む機会をうかがっている。男は数年前に愛する妻と腹の子を一度に失ってから、自暴自棄になり、世の中のしあわせなものを恨むようになる。心の奥に住み着く暗い憤怒をかかえて、幸せそうな家に忍び込んでは金を盗んだ。しかし研ぎ職人としての仕事はまじめにこなしていると思っている。「泣かない女」女房持ちの道蔵。主人藤吉の家の出戻りのお柳に、女房と別れてほしいと言われその気になるが、いざとなって始めて気が付く女房お才との幸せの日々。
2004/09/04
山内正
履物の緖を風呂敷に羽生屋に これからかいおよねさん 暗い家にそんなに急がなくても 正月で四十になる 兼蔵は羽根で庇う様な人だった羽根の下で不足なく暮らしてきた 一周忌を済ませ遅くに帰った 井戸の側に男が倒れてた 飯を三杯食べ着換えた この前の火事で焼き出され 仕事の親方は小田原に越したと 親も家も失くしたけど何とかする 一晩だけなら泊めてやる 半月し仕事仲間が見付かり 仕事の世話をしてくれたと およねの弁当を持って仕事に行く 本雇にと言われたと 酒を買ってきた このままこの家に暮らさないかと 口に出そう
2021/12/02
山内正
ほら来たよとおもんの脇腹を突く 鯖の味噌煮と鰯の焼いたのどちらに 桶安で働く重吉 もう一月になる 無口な人 しっかりした一人前の嫁さんはどんな人だろうと おもんは出戻りの 今も弟が金をせびりに来ているし 用事で帰り道重吉と出合いお茶でもと誘われた あんた男の人と立ち話 していたねと聞かれ 男ってあれ弟ですよヤクザな弟でと 店におめぇの弟が不始末をしてなと おめぇを売って返して貰おうかと 半金は払いやす残りは必ずにと 話を付け弟を引き取った重吉 にやりと笑った弟の顔を張り この人に付きまとうな おめぇ死ぬぞ
2021/09/12
感想・レビューをもっと見る