消えた女 他二篇 藤沢周平全集 第十一巻
消えた女 他二篇 藤沢周平全集 第十一巻 / 感想・レビュー
モトラッド
★★★★先生の全集第十一巻は『彫師伊之助捕物覚え』の三篇『消えた女』『漆黒の霧の中で』『ささやく河』すべてを収録。捕物小説において、この分量の長篇は珍しいとのこと。更に、捕物小説に登場する探偵が、伊之助のように(故あって)心に癒しがたい傷を抱え、内面的に屈曲した人物として描かれていることも、極めて特徴的。これが、物語全体に、哀愁を帯びた陰影をもたらしています。そして、それがこの小説の最大の魅力とも言えます。
2020/10/17
山内正
六つの鐘で伊之助は帰る 彫藤にもう三年 町を抜け酒と書いた戸の前におまさが立っていた 確かめただけで引き返す 幼馴染みだが今は会っていない 世帯を持たず一人で店をやってる 言いたい事を抱かえて 女房は逃げた後死んだ 今は女は要らねえ 戸を開けると人が待ってた 弥八って元岡っ引きよ年寄りが 見てくれと簪と紙切れを出す お父つぁん助けてと娘おようの字が 行方が分からねぇ探しちゃくれめぇかお前でないと出来ねぇ 何が見えたね、手?青い着物 簪を預かった子供にやっと会えた 預かったと言う町を ここにいる筈だ娘は
2021/06/19
山内正
目立つ程の美人が茶を勧め部屋を出る 揉み手しながら高麗屋が入る 半沢より少し上の人を逸らさない笑みを浮かべ 僅か三十両と話しだす 他に大金が有ったのに 二重の鍵を破らないと入れ無いがと 一人で盗みが気づかれずに 届けが一日遅いのが 迷ったと言ってたが お前の親父なら三日で捕まえたものだと嫌味が耳に残る 不思議な程不審な届けが無い 知らぬ間に眠り起される 伊之助が来たと 由蔵ってのが殺され調べるうち今度の件と繋がりがも半沢に話して帰る途中見知りの店から人影が出て走り去る 見た覚えの影だが
2021/06/23
オールド・ボリシェビク
藤沢周平全集の第11巻は「彫師伊之助捕物覚え」の全3作「消えた女」「漆黒の闇の中で」「ささやく河」を収める。元岡っ引きながら、仕事を嫌って出奔した妻がよその男と心中。その後、彫師として静かな暮らしを送るつもりだった伊之助。腕利きだったことを知る同心らから、「頼まれちゃくれねえかい」と探索の依頼が相次ぐ。仕事の傍らの探索には苦労も多いが、隠された秘密に着々と近づいていく。設定としては異色だが、本格的な捕物帳だ。罪を犯す者たちの闇は深いが、伊之助の人物造形がどこか淡々としていて、救いになっている。
2024/06/09
山内正
戸を開けお前さんが由蔵さんかえ おようさんの事で、三月になる出て行って 若い女が入ってきた 月に一度金を持ち帰ると言う 賭場に入り浸りの男が 近くの店で待つ 黒い影が通った 手拭いで顔を隠した女と立ち話した後路を急ぎ料理屋へ入り すぐに出て来た 恐喝だ金を貰いに 次の料理屋への帰り 後を着ける伊之助の横を黒い影が 走り由蔵にぶつかる 悲鳴が聞こえ由蔵は倒れ男は走った 闇の向こうから伊之助を呼ぶ声が聞えた気がした
2021/06/21
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