橋ものがたり 藤沢周平全集 第十四巻
橋ものがたり 藤沢周平全集 第十四巻 / 感想・レビュー
モトラッド
★★★★★傑作短篇連作集『橋ものがたり』「週刊小説」昭和51年3月~52年12月、これも傑作短編連作集『本所しぐれ町物語』「波」昭和60年1月号~61年12月号、『喜多川歌麿女絵草紙』「オール讀物」昭和50年6月号~51年4月号。この三篇を収録。敢えて初出を記したのは、先生にとって最も多くの作品を創作し始める黄金期に当たるからである。前述の二短篇集は、藤沢文学の白眉とも云える物で、改めて全集にて読み込み良さを再認識。少々創り過ぎかとも。『喜多川歌麿女絵草紙』は全集で読んだ事でその特徴が際立たち感銘を受けた
2020/12/15
山内正
戸を開けたらあらあらと女が先に声を出した もう帰れない 休み癖の亭主が長屋の女と抱合った どうしたと聞き覚えの声が与次郎だ 酒を飲みながら話をする おろくはこの人と呑んじゃいけないよ 家に戻ると大家が心配顔で 家に戻れだってよく言えたもんだ 兄は居なかった、義姉は何か用でも 家に戻るとさぞあたしを憎んだでしょうが弾みだったの馬鹿だった堪えておくれな 与次郎が家に来て話の途中だお前に用はねえ外に出た 怪我をし戻った亭主が彼奴も這って帰ったと懐へ手を入れてきた
2021/02/22
山内正
六年前弥平はいかさま博打で江戸を捨てたが戻ってきた 待つ人も居ない町に 昨日抱いたおさよって女 二年前亭主と子を置いて女郎に 五十両借金が有り今の暮らしからは抜けられないと笑った 家は分かった女と遊んで子供は老夫婦がみてると 胴元は賭場に入れ貸しは返して貰う 弥平は死んだ女房と女が重なる 苦労しに生きてきた様な女と 同業の梅市の金を巻き上がろと 長い時間掛け立上り帰った 夜中の道で声を掛けられた いかさま野郎と三人に匕首を交わし 逃げた路地を曲り追う男の腹を刺す おさよに金を渡し足抜けと 江戸には戻れない
2020/11/30
山内正
母が死に父親熊平がまだ帰って来ない おきちは一人木戸を出て表通へ 途中で酔い潰れてないかと夜道を探す 水路の陰に人が父親だ鼾をかいて起きない 三日して目を覚まさない父親に医者も呼べない 男が具合どうだいと借金の催促に 又来ると男は帰ったが 金貸しのおつなに五百文貸してと 何に使うのさ医者だいにかえ 内職して返しますと返事をする 翌日熊平は死んだ他所へ行って働きますと世間に返事をした おばちゃんもう一度二両貸して下さい金貸しにあと油屋と味噌屋に 女衒が連れに来た 風呂敷包みを抱かえ お世話になりましたと
2021/02/13
山内正
新吉に誘われ使いの口上をしっかり言い帰った 新ちゃん大人だな 同い年なのに 長太長太と逃げた母親が呼ぶ おっかぁに合ったと父親に言うと 自業自得だと 何な事か分からない そいで長ちゃんはどっちなのよ 大人っぽい顔でおいとが聞く 俺はもう餓鬼じゃねぇと思う 母親に会いに初めてじゃない町を 歩く 戸が開いて、ねえ良いだろ?母親の声 長屋の人に見られて気が狂いそうで そっと外に出た境内に新吉がいた おいとちゃん伯母さんの子になるらしい 戻ると簪差し袋を持って籠においとが乗り町を離れて行く 誰もいなくなった
2020/12/31
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