海鳴り/天保悪党伝 藤沢周平全集 第十九巻
海鳴り/天保悪党伝 藤沢周平全集 第十九巻 / 感想・レビュー
モトラッド
★★★★★『海鳴り』『天保悪党伝』を収録。『海鳴り』は情愛の籠った比類なき美しい描写で読者を魅了する藤沢文学の最高峰。冷静に考えると不倫の物語だが藤沢氏の筆捌きはそれを純愛に変える。お見事!解説にもあるが、冒頭から悲劇の香りが立ち上り一気呵成に主人公達の物語は深まる。文庫本(1987年10月10日第1刷)の解説→「新兵衛さん、待ってください」(同下巻27頁)おこうの、この言葉に続く10行余りの文章は、我が国の小説史に残るであろう美しさを持っている。/『天保悪党』は、やくざな稼業を生業とする主人公達を活写。
2021/05/11
モトラッド
★★★★★ 藤沢先生の二大作品=『海鳴り』『天保悪党伝』を収録。先生の金字塔的作品=『海鳴り』の単行本も手元に置きたいが、全集を揃えて行く楽しみの方が勝った。しかも『天保悪党伝』が収録されていて、三読を兼ねて読み込んだ。
2020/03/28
山内正
使いは須川屋の手代が 商売の都合も御座いましょうが 呼ばれて奥に三人が座っていた 万亀屋と山科屋ともう一人丸子屋 新兵衛は挨拶を取り敢えず 紙問屋仲間の役が並ぶ 紙漉きの瀧やと付き合いを言い出す 内々の話が紙漉き屋に漏れて 出荷を見合わす構えだと あんたが煽っているのではと 途中から山科屋がそこまでしなくともと割って入った 小野屋さんの疑いは晴れましたと もし本当なら仲間から外す積りですかと新兵衛か言い切った さもあったように言い切るのは 誰が言い出したのか 待ちなさいと山科屋が遮った きな臭い話がする
2021/11/04
山内正
寄合の客が一気に籠を待つ人が多い 離れた場所で新兵衛は待つ馴染みの鶴見屋の女将と山科屋が肩を並べ去った誰も声を掛けない 籠で大通りに出た鳥居の陰に女が蹲ってる 丸子屋さんじゃと声を掛け 酒に酔ったらしい 抱かえて近くの 女宿へ 女将に立会わせ帯を解き 襟を開く この人の為に出た方が 小野屋さんと柔かい手が おこうはぼんやりと 覚えて無いと 今離そう 帯を解き襟を開いて寝せたのは私です 解りました誰にも話ません心配お掛けしました 素晴らしい人だ丸子屋の女将は 何も心配する事は無い 一人先に出て船に乗った
2020/12/15
たあこ
「海鳴り」初老の男性には特にお薦めします!この作品は藤沢さん55歳の時の作品。中年になると考えることも若い時とは違って、老いゆく日々のことや自身に見つける老いの兆候に落胆したりする。 「天保悪党伝」連作長編。ワルが6人揃うと… 三千歳のありんす言葉が色っぽかった。
2014/11/06
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