無意味なものと不気味なもの
無意味なものと不気味なもの / 感想・レビュー
keroppi
精神科医である著者が、不気味な味わいの小説を取り上げて論じている。どれも読んだことのない作品ばかりなのだが、精神的な不安定さにあふれていて読みたくなってくる。著者の経験談とからめて語られるのだが、その経験談こそが、なんとも不気味である。
2024/07/14
三柴ゆよし
再読。精神科医による文芸エッセイ。二年くらい前、学校をサボってファミレスでひとり読み耽っていた時のことを鮮明に覚えている。「著者自身もずいぶん不健全だな」というのがその時の感想であったが、なぜかお気に入りの一冊になってしまっていた。どっちつかずの宙ぶらりんであった当時の心理と(いまもそれは変わらないが)、本書で取り上げられている小説の「無意味なもの」、「不気味なもの」とが奇妙にリンクしていたせいかもしれない。春日武彦には、もう一度こんな感じの本を書いてほしいように思う。
2009/05/11
円盤人
明確に怖いわけではないが、その手前にある忘れがたい小説群、文字通り「無意味なものと不気味なもの」について書いた本。その主題に沿うように、カジュアルなエッセイよりは重く、論考というほど大仰ではないバランスで書かれている。著者は精神科医だが、文学の素養もあって(ペンキの禿げた看板をさらりと皮膚病に例えるセンス)、お題の作品に沿った著者自身の、怖いというほどでもない逸話が挿入されるのがまたおもしろい。こういう掴みづらい感覚を的確に言語化していくのは驚くばかりだし、どこかユーモアが全体に漂っているのも良い。満足。
2024/07/10
カンジ
前置きと本文の関連付けが絶妙だと思います。よく考えられた、ていねいな文章だと感じます。読み進むにつれて、だんだん疲れてきました。でも底無し沼の辺りなど、共感できる部分にくると、一気に興味が湧き上がりますねやはり
2020/05/30
らむだ
無意味なもの、不気味なものにまつわる作者自身のエピソードを交え十六篇の小説について語った一冊。 「文学研究といった高尚なものではないし、エッセイと称するには強迫的な気配が漂い過ぎているだろう。」というまえがきの言葉が妙にしっくりくる、なんとも言えない味わいのある作品でした。 ※牧師の黒のベール、半所有者、長靴の物語、仁摩、ランドルフ・カーターの陳述、旅は道連れ、人魚とビスケット、風景小説、目かくし運転、夜の音、消えた娘、遠い空、黄金の眼に映るもの、忌中、殺生、父の最後の逃亡
2016/07/26
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