言葉はなぜ生まれたのか
言葉はなぜ生まれたのか / 感想・レビュー
ヴェネツィア
著者の岡ノ谷一夫氏は、歌が人間の言語の起源ではないかとの仮説を提唱しているのだが、本書は数あるこの人の著書の中でも最もわかりやすい。石森愛彦氏のイラストいりで、中学生にも(あるいは小学校高学年でも)理解できるように整理されている。岡ノ谷氏によれば、ことばを話すための条件は4つ。①発生学習が可能な事 ②文法を持つこと ③音と意味が対応していること ④社会関係の中で使い分けられることである。ヒト以外にこれらの4条件を満たす存在はない。せいぜいジュウシマツが①と②を満たすくらいである。そして、結論部では⇒
2023/11/10
absinthe
人間の言葉の特徴は 1)発声の学習 2)音と意味の後天的な対応付け 3)文法がある 4)社会関係での言葉の使い分け。歌が言語の祖先であるという系の人。言語学界隈では敬遠される5仮説の一つだが、absintheもこれを本気で信じている。ジュウシマツやテナガザルの鳴き声の解析から言語の秘密に迫る。普段、門外漢には見られない研究室の中の様子などが垣間見れて面白い。中学校ぐらいを想定読者にしたのか、読みやすいがもう少し深堀してほしかった。
2023/12/21
のっち♬
脳科学総合研究センター生物言語研究チームのリーダーが語る言葉の由来。①呼吸コントロールによる発声学習の発達、②音と意味の対応、③文法、④社会関係の4点を条件とし、特に③のジュウシマツとヒトに共通する「音の切れ目を認識する能力」こそが本書の刺激的な部分だ。状況に応じて複雑な歌をうたいわけるミュラーテナガザルに着目し、歌の重なり合う部分が切り分けられて意味が付加されて単語が誕生したという逆転的な発想に唸らされる。流石音楽愛好家。赤ん坊の泣き声から①へ繋げる点も然り。十代前半から読める理論解説の明晰さも特筆点。
2023/12/18
1959のコールマン
☆5。読み友の皆様が言うように、まさしく良書と言えるだろう。分かりづらいことをこれ程までに分かりやすく書いた本は初めてだ。本書を一言で言えば「ことばは歌からうまれた」なのだが、著者は「あくまで仮説だよ~~」と腰が低く、加えて、コラムで科学的仮説について細かく説明している。嫌な印象を与えない。もちろん「じゃあなぜ人間は歌を歌えるようになったの?」という疑問は残る。歌がことばに変化する過程もちょっと強引に感じた。それに子供向けなので、イントロダクションだけ、といった印象は受けた。まあでも十分合格点。
2019/09/08
かんやん
先ずヒトの言葉の四つ条件として、①発声の学習可能性②音と意味の対応③文法の規則性④社会関係(による変化)をあげる。次にそれぞれの条件を個々に満たしている動物の鳴き声を分析する。①オウムや九官鳥(息を止める能力があれば発声学習できる)②テンジクネズミ③ジュウシマツ④ハダカデバネズミ!さらに歌うように鳴くテナガザルの鳴き声(のバリエーション)を考察し、ヒトの先祖は歌う霊長類だったのでは、と。つまり歌でコミュニケートするうちに、様々な歌の共通部分が切り離され、意味を形成していったのではないかという仮説。
2018/06/20
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