ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯
ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯 / 感想・レビュー
やすらぎ
足元には雛。足と翼に欠陥を抱え瀕死の重体。巣から落とされた無数にいる自然の犠牲者であろう。本書は戦火のロンドン郊外、人と小鳥との間に培われた親密な友情の記録である。…私が帰ると出迎え、飛べないのによじ登って襟の中に入る。疲れたときはベッドに誘い、首元に寄り添って一緒に寝る。…空襲で家が壊れても、お気に入りのブランコに乗っていた。奇跡か本能か。…ピアノを弾くその手に乗り一緒に旋律を奏でる。老いて最期が近づくと、私を信じてずっとそばにいてくれた。別れの瞬間、幸せだったと彼は言った。そう、いつかまた会えるはず。
2021/05/09
ヴェネツィア
右翼と左脚にハンディキャップを持つスズメとの12年間にわたる共同生活(そう呼んでもいいと思う)をつづった記録。観察は暖かい中にもきわめて冷静、客観的で誇張はないと思われるが、スズメ(このクラレンスの場合は特別かもしれないのだが)の個性や能力、感情の豊かさは驚くばかりだ。梨木香穂の訳文もいい。
2012/04/01
しんごろ
舞台は第二次世界大戦中のロンドン郊外。足と翼に障碍を抱えたイエスズメ(クラレンス)。キップス夫人に拾われ、夫人とイエスズメのまるで家族のような生活。幸福いっぱい感じられ、なんとも温かく微笑ましい。晩年のクラレンスの生き抜こうとする姿、確かに誇り高い生き様を感じた。見事な12年の生涯だった。珠玉の一冊と言っても過言ではないでしょう。
2022/04/22
小梅
作者のスズメを見つめる愛情深い眼差しが感じられる作品です。12年…脚などに異常がなく生まれて、他のスズメと共に生きていたら、この半分の年月を生きる事も難しいのかもしれません。自然には天敵や危険が沢山ありますからね。 11年目に病気をして生死を彷徨った頃からの彼の賢さと努力には強く感動を感じました。 しかし、シャンパンで元気になるなんてビックリだ。
2014/07/11
hirune
障害があるため親に見捨てられ、人間に育てられた小さなスズメの物語。飼育下で芸をしたり複雑な歌を歌ったり、高い能力を発揮し、とても長生きしたクラレンスですが、野生の動物は過酷な環境を身一つで生き抜くのに色々な能力や知恵や体力が必要なのでしょうね。瀕死の病気を乗り越えて、老いたクラレンスが多分夫人に思い出を残すために、自分の写真を協力的に撮らせるエピソードには、彼の深い愛情に涙が出ました。
2014/10/02
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