氷山の南
氷山の南 / 感想・レビュー
クリママ
交換留学生としてニュージーランドの高校を卒業したアイヌの血を引く18歳の青年が、枯渇した水資源を補うため、南極海の氷山を曳航するオーストラリア船に密航する。コック、船内新聞の記者として働きながら、上船している人達、アボリジニの青年画家、アイシストなどと交流していく。与えられた仕事に前向きに取り組んでいく彼の姿に好感が持てる。青年の視点から描かれた瑞々しい文章。その成長物語に若い時期にこんな体験ができたらと羨ましく思う。そして、それぞれの生き方、人間のために自然資源を使う是非など、考えさせられることも多い。
2021/10/10
それいゆ
南極行きの船に密航者として潜り込み、発見された後に何とか雇ってもらうあたりまでは、次はどうなるんだろうかなという期待感と話の面白さにのめり込んでいきましたが、途中からなぜか読む気がしなくなりました。話が退屈なのか、私の辛抱が足らないのか、550ページの量が多すぎるのか、南極や氷山といわれても私には現実味がないのか?よく分かりませんが、飛ばし読みになってしまいました。たぶん今の私には受け入れ難い話なのでしょう。
2012/05/25
あずき
オーストラリアの農地の水不足解消の為に、南極の氷山を運ぶという大プロジェクト。その船に密航した18才の少年ジン・カイザワが主人公。彼はアイヌの血をひく日本人。発見されてからジンは船の中でパンを焼き、船内発行の新聞記者を任されたりする。色んな人種が乗り、宗教があり、又船の中では当然の事ながらそれぞれ違った役割がある。18才の少年がその中で成長していく。芸術、科学、集団心理、宇宙の不思議、「アイシスト」という宗教を絡めた自然との共生。内容は盛り沢山。ただ、ジンが18才という年令のわりにスーパーすぎてびっくり。
2017/09/16
ハチアカデミー
A 「氷山を見たい」という思いから南極行きの船に密航を企てた18歳のアイヌ、ジンが、様々な立場の人々と接することで、内面的成長を果たすビルドゥングス・ロマン。文学的、科学的、時事的教養をふんだんに盛りこんだ、壮大な冒険小説である。前半がやや退屈なのは、冒険小説に必要な情報を説明するため。アボリジニで絵描きのジンの故郷に行く辺りから、一気に引き込まれた。アイヌの伝統、アボリジニの伝統、各国のナショナリズム、宗教、思想が、時に対立しながらも、主人公を成長へ導く。絶対的他者としての自然を垣間見ることもできる。
2012/05/23
shishi
[A]なによりもまず、地理的・文化的スケールが圧倒的。氷山を曳航して水不足を解決するという時代を反映した物語。主人公は18歳の男の子。カーボン・ナノチューブや燃料電池から、イスラームやアイヌやアボリジニー、氷の世界の物語だから、氷の話も盛りだくさん。ストーリーの強さはそこそこだが、小説に詰め込んだ材料と調理の仕方がすばらしい。後世に残るんじゃないかと思う。語り口は軽いけれど、物語自体は現実と密接に結びつき、切羽詰った現代文明の問題を掲げている。これから世界はどうなるのか、不安と期待がこめられた大作。
2012/04/10
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