羅針
羅針 / 感想・レビュー
まつうら
もう鯨を食すことも少なくなったが、この作品の捕鯨船の様子に、思わず鯨肉の味を思い出す。そんな懐かしさが漂う作品。でも「羅針」というタイトルは、捕鯨船や船乗りを意図したものではない。親として、父として、子に何を示してやれるのか、そんな親子関係を羅針に例えている。思えば、自分も子供のころは父の背を見て父を超えようとあがいていた。父親となったいまは、果たして子の羅針たり得るのだろうか? 主人公の源蔵は、早くに父を亡くしため、息子への羅針に悩むが、父を見ていても迷いはあるものだ。すべての父親諸氏に捧げたい一冊。
2023/03/07
キムチ
慣れ親しんだ楡氏の作風・・勝ち組と経済のコラボとは異なっていた。いうなれば人として、生きることの原点をつぶさに問い詰めている作品。男の匂いがきつすぎるきらいもないが、当然かな・・捕鯨の世界だし。源蔵が息子の秀俊との軋轢を随所で呟く。そし秀俊の脳裏に置きつつ、配下の敏雄に語って、してみて、やらせて仕事の世界を伝えていく。まさに昭和の世界!図らずも多喜二の蟹工船の世界を重ねる。一見淡々とした語りが続いていく終盤、キャッチャーボートに移る事態となり、パッションの世界へ移る。水葬、遺書を書く、生と死のはざ間だ。
2014/09/06
ち~
遠洋漁業の船の機関士、源蔵は一度漁に出ると数ヶ月は戻らない生活だ。南氷洋の捕鯨船に乗る直前、息子との諍いで気まずい出航となる。頼まれて船に乗せた無気力な青年敏夫も気がかりだ。船上の生活や仕事風景は興味深く、甲板での鯨の解体や事故死した船員の弔いなど読み応えのあるエピソードも満載。漁の終盤での最大の時化。船のトラブルにより零下10度の極寒の中、母船の救助も望めない。氷に閉ざされた船内で22名の船員は身を寄せ合い運命を共にする。極限状態の中での決意と「だから俺、生きたいんです」の力強い敏夫の声に希望が灯る。
2017/12/18
ゆみねこ
今まで知らなかった船乗りのお話。遠洋漁業、捕鯨船と男の世界を読ませてもらった。一度乗り組んだら途中で引き返せない、亡くなってっも遺体は水葬にするなど、未知の世界を垣間見ることが出来た。今時の青年、敏雄が成長していくのがよかったが、肝心の主人公関本源蔵と息子の絆の話は少し中途半端な感が。楡さんの今までの作品とは違った世界で面白かった。
2012/06/03
Syo
超高速モードで う〜む
2022/10/02
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