夜蜘蛛
夜蜘蛛 / 感想・レビュー
Take@磨穿鉄靴
手紙による日記のような構成。赤の他人に何を伝えたかったのか。伝える本人も分かっていないし自害してるし作家なら分かるかと丸投げされた作家にしてもこの内容だけでは当たり障りのないお茶を濁すような話をするくらいで何も言えない。実際この話を受けての作家の言葉は数ページのみ。正直何とも言えないと思う。本当に何故これを赤の他人に投げたのか不明。自分の日記帳に書いておけばよいレベルおよび内容。★★☆☆☆
2023/06/17
ハチアカデミー
C 言葉に縛られる人間の姿を、丁寧に描き切った作品であり、完成度が高く安心して読み進められる。昭和という時代に殉じた老人の姿を、理解し得ないものとして描くことに成功している。弱っていく父親の姿を冷静に見つめる語り手の姿には好感が持てるし、その思考の奥行きの無さは、人間の鈍感さのカリカチュアとして、良く描けている。だがしかし、自らの夢想や愚鈍さやルサンチマンを素材に作品を産みだしてきた作家にしては棘が無さ過ぎる。入れ子にするために前後に配した作者の言葉風の文章も不要だろう。もっとやれる。飛べ、慎弥。
2012/11/21
そうたそ
★★★☆☆ 芥川賞受賞後第一作とのことで、なかなか気合入ってると思ってしまう。最近では初期に比べてより純文学的な色彩を帯びてきているように思える田中さんの作品。より分かりやすい作品が増えている気がする。ただストーリーの軸が「父と子」というのは以前からよく作品に見受けられるもので、そのあたりは作者のこだわりなのだろうか。淡々と話が進んでいくのだが、戦争を経験し戦後を経て昭和が終わろうとしていく中、次第に老いてゆく父とそれに伴い忍び寄る「介護」という二文字。その辺りに夜蜘蛛を絡めてくるのは流石だな。
2013/02/12
星野
図書館にて。意外に読みやすかった。戦争と老いることの意味が強く主張されている印象。確かに人って自分はもちろんのこと、親は死なないものだと潜在的に信じてしまうというか、おもいこみがち。自分もそうだし。自殺のくだりは小説的だとしても、介護描写はいずれ通るかもしれない現実的なもので、なんだか読みながら怖くもなった。生きていくうちに怖いものは変わっていくにせよ、完全にはなくならないものなのよって歌をうたったシンガーがいたことを思い出した。
2013/01/23
hideboo
芥川賞受賞作は何となく惹かれるものがなく、たまたま手にしたこの本がが初田中作品となりました。冒頭からさりげなく引き込まれ、ラストまで一気でした。内容そのものは、老いに対する怖れのようなものが実感として伝わり、心地よさといったものはありませんが、これが純文学だという印象を持ちました。
2013/01/14
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