調律師
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調律師 / 感想・レビュー
遥かなる想い
『邂逅の森』のイメージで この本を読むと戸惑いを 覚えるだろう。 熊谷達也が初めて描く 現代小説。「音」を「香り」と して、感じられる調律師を 通して、現代に生きる人々を 描いた短編集。全編に音楽の 響きを感じるのは、主人公が 調律師だからなのだろうか? ピアノの調律をおこないながら、 通り過ぎた出来事を描いていく。 昔のアメリカエッセイにも似て、 心落ち着く物語だが、清逸すぎて、 戸惑う面もある。最後は、ある意味、 想定通りの終わりかただった。
2014/08/26
あすなろ
佳作なのではないか。ピアノの音に匂いや色を感じる元ピアニストで調律師の連作短編集。ピアノの世界や調律の世界ぎ垣間見れ、知れる。そこにミステリーの要素も詰まる。それだけで佳作と僕は思うのだが、後半で東日本大震災の要素が加わった。それが本作と絡み合い、熊谷氏としては途中が主題が代わるかのようなことをして良いかという疑念があったとのことだが、僕にとってはこれは震災のリアリズムが強く感じられ、成功していると思う。本作の設定に合わせるため、削いだ描写となっていることがリアリズムを強く感じた一因か。
2015/07/19
さんつきくん
過去の熊谷達也作品のノスタルジックな描写や歴史的史実に基づいた出来事に立ち向かう人々の感傷的な描写が印象的ですが、今回の「調律師」は全然違います。妻を亡くした主人公鳴瀬。ピアニストとしての過去の栄光と傷を負いながら、調律師として音楽に携わる仕事をしていた。音の微妙なズレを臭いで解る「共感覚」という、特殊な能力を有している。6章目で「転調」せざるを得なくなる。東日本大震災。東北人として当然だが。仮に「転調」しなかった場合、どの様な終幕になったのだろう。とも思えた。
2013/07/10
風眠
ピアノ弾きにとって、腕のいい調律師は頼れる相棒のような存在だ。自分で鳴らす楽器なのに、チューニングは人にお願いするしかないから「この人」という調律師は絶対に離さない。私にも長い間お世話になっている調律師さんがいる。それはとても幸せなことだ。共感覚(音に色や匂いを感じる)をもっている主人公の鳴瀬の目線で描かれる連作短篇であるが、調律の技術的な部分がとても面白かった。この小説執筆中に3.11があり、6話目から転調せざるをえなかったと作者は述べている。ピアノも凶器となってしまう、災害の恐ろしさを突きつけられた。
2014/01/12
takaC
終盤の転調は予定外だったそうだが、転調しなければどんな終わり方だったのだろう。
2018/01/21
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