代官山コールドケース
代官山コールドケース / 感想・レビュー
こーた
人物の内面や心理は、ほとんど描写されない。事実と動作、それにテンポのいい会話。いっさいのムダを排した冷たくて硬質な文章が、ほどよいリズムと緊張感を生む。捜査を進めて事実を集め、心証を形成して像をむすぶ。都会を夢見て上京した少女は、なぜ殺されなければならなかったのか?被害者の想い、容疑者の魂胆、刑事の熱量。他者の内側は、その言動からしか窺い知ることはできない。描かれないからこそ心理に目がいき、あれこれ想像することでその人物の内面が浮き彫りにされる。これぞハードボイルド!
2018/04/12
ケイ
『地層操作』のシリーズ。更にパワーアップした感じで一気に読んだ。代官山で十数年前に被疑者死亡のままで解決したと思われた事件の現場にあったものと一致するDNAが、神奈川の女性が殺された事件現場で再び見つかる。警察庁は神奈川に先を越されるまいと昔の事件の再捜査をする。40時間の出来事と思えぬほど、みっしりと濃い内容。神奈川県警の扱いや、事件の展開、また代官山の事件に関わった時田が偶然に居合わせるところなどに若干出来すぎ感があったかな。
2014/01/20
chiru
強姦殺人事件からでたDNAが17年前に死んだはずの代官山殺人事件被疑者のDNAと一致。 誤認逮捕の汚名を返上すべく秘密裏な捜査を決行する警視庁。 刑事たちの足を使った地道な捜査のシーンで、ほとんどのページが埋まってしまうのに、ボリュームのあるページ数を感じさせないのがすごい。 代官山はよく行くエリア。 坂が多いだけでなく、行き止まりの一本道や、長い坂、急な階段も多く、現職の刑事さんたちが聞き込みするのは大変だろうなって思い浮かべながら読みました。 ★3.5
2018/06/22
ゆみねこ
17年前に起こった一人暮らしの女性殺人事件。代官山が再開発される前の古いたたずまいが残っていた頃に起きたその事件は、被疑者死亡という形でけりがついていた。時を経て、川崎市で起きた女性暴行殺人事件で同じDNAの残留物が見つかる。水戸部は女性捜査員朝香とコンビを組み、親友の科捜研職員中島の協力を得て丹念に資料や当時の関係者を探って行く。前作「地層捜査」でも感心したけれど、本当に丁寧な地形描写で、その地をよく分かる人にはたまらない読み心地ですね。面白かったです。
2014/08/12
じゅん兄
20年近くに及ぶ街の移ろいを描くためにコールドケースを題材にしたかのような、これは代官山が主役の物語。前作では四谷荒木町の花街としての佇まいから、現在の変貌した姿までを丁寧に描写していた。今作品でも、主人公を代官山の隅々まで歩かせ、過去の情景と重ね合わせて描く街の変わりゆく姿が印象深い。そう言えば「廃墟に乞う」も北海道の風景が記憶に残る作品だった。あっ、もちろんミステリーとしても楽しめました。
2014/03/08
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