甘いもんでもおひとつ 藍千堂菓子噺
甘いもんでもおひとつ 藍千堂菓子噺 / 感想・レビュー
文庫フリーク@灯れ松明の火
【白木の桟に女の指が掛かった。華奢で滑らかな、女の指だ。人差し指だけが、真っ直ぐに伸びている。何かを持つ時に人差し指が軽く立つ、「かの女」の癖。音もなく、障子が滑った。幸二郎は、目を閉じた。桜の花びらが、螺旋を描いて舞い散る】和菓子の描写もさることながら、かつての想い人との邂逅描写に魅せられてしまう。父の起こした上菓子屋「百瀬屋」を叔父に追い出された晴太郎・幸次郎が頼ったのは、父の元で働いていた職人・茂市。小さいながらも自分の店を兄弟に譲り、三人で開いた「藍千堂」。甘味には疎い私だが、職人ものは大好物→
2014/04/12
藤枝梅安
オール讀物に掲載された連作短編をまとめた1冊。父が興した菓子屋・「百瀬屋」。そこで生まれた晴太郎と幸次郎の兄弟は、両親の死後、父の弟に厭われて生家を追われる。今は両親の旧友である薬種問屋・伊勢屋総左衛門の力添えで小さな菓子舗「藍千堂」を営む。父のもとで職人をしていた茂市も助けてくれる。甘い物好きの同心、従妹のお糸などの登場人物を配し、叔父の嫌がらせを乗り切る兄弟の姿、叔父が兄弟を追いだした理由などが少しずつ明らかになっていく。お菓子好きにはたまらない、しかも読みやすい時代小説。
2014/05/26
すなどけい
亡き父が残した評判の菓子屋を追い出された兄弟。新たに始めた小さな菓子屋で力を合わせ父の味を守ろうと奮闘する。真摯に菓子作りに向き合う二人を見守る老職人。物語の舞台はあくまでこじんまりと描かれ、和菓子作りに絡む出来事も主役の和菓子の風味を損なわないように丸く収まっていきます。ゆるゆると読みつつ美味しそうな表紙の和菓子でちょっとひと息入れる。凝った章扉を見て次はどんな話なのかチラリ想像したりするのも楽しい。おやつどきに読むのにはもってこい。でも夜更けてまで読み続けてはいけません。
2016/10/18
ぶんこ
上生菓子には、まったく興味がなかったのですが、読んでいるうちに、作り手の創意工夫がたっぷり込められていると知り、今すぐにでも買いに行きたくなりました。「青柚子の葛切り」を食べたい!
2014/01/14
浅葱@
和菓子屋『藍千堂』の兄の晴太郎。弟の幸次郎。兄と弟、ぎくしゃくもし、感情の沸点も違う。でも何かがあると互いを思いやるところが兄弟だなぁ。事がある度に藍千堂と過去の経緯(いきさつ)が少しずつ明かされ、ちょっと涙したり、ほっこりしたり。出てくる和菓子の工夫、美味しさが何により。カバー、章扉も良くて、一冊丸々、藍千堂だった。
2014/08/15
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