エヴリシング・フロウズ
エヴリシング・フロウズ / 感想・レビュー
ヴェネツィア
地元の公立中学校に通うヒロシの視点から、3年生の春からの1年間を描く。いわゆるヤンキー文化圏の人たちは中学校区とそこで過ごしたかつての同級生に拘泥するらしいのだが、ここにはヤンキー臭はないものの、世界は狭く人間関係も限定的だ。もっとも、主人公ヒロシのヒエラルキーあるいは性格ゆえか、関係性はさほど濃密にはいたらない。これは誰もがかつて置かれた、イニシエーションの物語なのだろうか。しかし、けっしてノスタルジックでもない。この淡々と語られる日常のリアリテティが本書の真骨頂であろうか。
2017/07/06
みっちゃん
ああ、もう大好き。あの『ウエストウィング』で小学生だったヒロシが中3になっていて。相変わらず考えすぎるから、友達や好きな女の子に声をかけようか、何て言おうか、いや上手くいかなかったら辛い、悶々としているうちにタイミングを逸してしまう。喋りすぎて口煩い母親にも面と向かっては言えず、脳内でぶつぶつと毒づくのにはもう笑ってしまう。臆病で不器用で。でもとびきり優しい心を持っている。友の絶体絶命には勇気を出して、声を張って走り出すんだ。胸が熱くなるよ。あんたのこれから先に幸せが沢山たくさん、待っていますように。
2022/04/05
めろんラブ
『ウエストウイング』で主要人物のひとりだったヒロシ(当時小5)が中3に。変則的な続編ですが、前作を未読でも楽しめそう。何がどこにどう向かっているのか、雲を掴むような話運びでおなじみの津村節が冴えている本書。始めは波に乗れなくても大丈夫、最後にはきっと読書の喜びが待っている、という信頼のもと読み進めました。よくあるスクールカーストを用いた青春譚かと思いきや、そこは津村さん、ひねりとエッジの効いた作りに魅了され、読了時には大きな感慨が。中3という時期の彼らを取り巻く状況や心の状態を端的に表したタイトルも最高。
2015/08/31
なゆ
おや?このヒロシは「ウエスト・ウィング」で塾通いの小学生だったあのヒロシだね。そうか、中3になったのか。クラス替えがあり、席が前のヤザワとなんとなく一緒に行動するようになり、気になる女の子もいたり、地味~ながらもそれなりの学校生活。ヤザワや同じ班の女の子のトラブル(けっこう深刻な)を見聞きしたら、「ああもう」って面倒くさがりながらも放っておけない。踏み込み過ぎない、でも気にはかけてる、微妙な距離感が津村さんらしい。卒業しそれぞれの道に踏み出すときの寂寞感や、高校入学式に向かう時の期待と不安、思い出すな~。
2014/09/25
修一朗
宮部みゆきさんが絶賛していて自分も読みますって言ってたのが2018年12月。そこからこんなに経ってしまった。津村さん,様々な世代や学年の人を描くけどもいつも「よくしゃべってその場の酸素を奪う」ような人間とは一線を画した人ばかり。ヒロシもそう,悩みごと不安ばかりの中3,なのにまぁいろんな出来事に遭遇すること。野末・大土居・フジワラ・フルエ・増田・ヤザワ,みんなイイ奴だ。「いやいやながら,たぶん,いやいやでもしないといけないことだから。そこから逃げたらまともな大人になれないから。一生後悔するから。」大好きだ。
2023/08/27
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