離陸
離陸 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
この時点で絲山秋子さんの本が20冊(その後最近刊『薄情』が出版され、現在は21冊)。私にとっては17冊目だが、相変わらず変貌を続けている。本編は10年くらい前から構想を温めていたらしいが、それがついにここに結実した。これまでは彼女の小説を日本文学の範疇で考えていたが、ここに至って世界の水準に達したように思う。読んでいる途中に、しきりにパトリック・モディアノとの相通性に想いを馳せた。しいて、作品を挙げれば『失われた時のカフェで』だが、それというよりは、小説の持つ核心のようなものが通底するように思うのだ。
2015/12/26
めろんラブ
圧倒的なものと対峙して、言葉が無力になる経験。それが本との出合いなら、私にとってこれ以上の幸せはありません。絲山氏の最新作を読み終え、まさに言葉を失う想いです。氏は、本書でジャンルミックスの純文学という難業を成し遂げ(先達は村上春樹でしょうか)、更にあとがきには、「これからもさまざまな表現や方向性を模索していくつもりです」とあり、なんてパンクなお方なのかとほれぼれ。読後、大いなる寂寞の余韻に包まれながら、今年の読み納め本として残しておけばよかったと、それだけが悔やまれます。
2014/10/17
なゆ
とてもとても心に沁みる、いい本である。タイトルの「離陸」が、何を意味するのか、そこのおさまり方が実にしっくりとくる。はじめは昔の彼女の消息を辿るミステリーっぽい話かと思ったが、それはただのきっかけに過ぎない。やはりいろんな土地を渡り歩き、矢木沢、パリ、霞が関、八代、そして…。長編だけあり、他にもたくさんの地名が出てくるのも嬉しい。幸福、不幸、幸福、不幸、というつぶやき。そしてサトーサトーという呼びかけが、とても優しく響く。謎は多いが、私も「わからない」でいいと思っている。感じるべき所は、違うと思うから。
2014/10/13
相田うえお
★★★☆☆ 18015 ダム勤務の男性(主人公)の元に、ある女性を探せとフランス人男性が訪れた。探す女性は主人公の元彼女だった。だが今は無関係。そんなときに主人公は急な異動でパリに行く事になり、依頼者の男と会う事に。。と始まります。読み進めていくと、この話って何?はてなマークが付き過ぎて逆に引き込まれてしまいました。ダム,震災,タイムスリップ等のモチーフに必然性があったのか?振られた謎は最後まで未解決のまま了。起承転結が当てはまらず起承承承と、ある意味、初めて経験する凄いものを読んだ気がした。おすすめ!
2018/02/21
❁かな❁
絲山秋子さんの作品を読むのは7作目。お気に入りの絲山秋子さんの新刊ですし、大好きな伊坂幸太郎さんの帯を見て読まなくてはって思いました!新境地開拓の長編小説。主人公の元恋人だった謎の女性を探すうちにいろんな出会い、別れがあります。舞台がフランスであったり、ミステリアスな展開で今までの絲山さんの作品とは違いますが、その全体の空気感はやはり絲山さんらしく静かで深く余韻が残る作品でした☆エッセイも含めると今作が絲山さんの20作目の出版となるそうです。タイトルの『離陸』が読了後、胸に沁みます*とても良かったです!
2014/12/27
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