Yの木
Yの木 / 感想・レビュー
KAZOO
辻原さんの久しぶりの短編集です。最近は長編の方が多かった気がしていましたがやっと手に取ることができました。若干フランスの作家のモーパッサンを感じさせるような作品もあったりでわたしには十分楽しめました。あまり評価は高くないようなのですが、「Yの木」などはその最たるものなのでっしょうが、私には小説作家への習作としての教材向きではないかという気がしています。
2016/11/04
クリママ
表題作含むの4編の短編。「Yの木」初老の男性の回顧か。実在の人物、出来事があり、作者自身のことかと思うものの、いや。淡々とつづられる文章。最後のページの捕捉を読むまで、どこへ連れて行かれるのかのかわからない不安感がある。他の3編もそれぞれに趣の違った作品で、3冊読んできたものの、辻原氏がどのようなものを書かれる方なのか見えてこない。ただ、心に残る。
2020/01/08
tomi
中短篇4篇収録。(表題作)小説家の「彼」と実在した作家・大瀬渉(東二)。「彼」は一見辻原氏を彷彿とさせ私小説風だが、読んで行くうちに全くの虚構だとわかってくる。大瀬の芥川賞候補作「ガラスの壁」や大瀬との交流や自死などを絡ませながら、時代から取り残された作家の苦悩が描かれる。妻に先立たれ貯金も尽き、死を考える彼の孤独は決して他人事ではない。他の作品では「シンビン」が印象に残った。
2015/11/06
Gemi
初読みの著作。1990年に「村の名前」で芥川賞、1999年に「翔べ麒麟」で読売文学賞、その他の作品では谷崎潤一郎賞や川端康成文学賞や大佛次郎賞等々受賞されている。先日「卍どもえ」と言う本を見かけて気になっていたのが、この著者だった偶然。これは表題作+短編3作を収めた作品で、まぁ芥川賞だなと。最初の「たそがれ」では弟の感情に移入。他人がする親族の話に対する不快感。読者には分かる姉の嘘と仕事。「首飾り」では疚しくないのに帰国後の妻の発言にドキリ。誤解ってどこまで解けるものなのか。まぁ全編不思議な感情になる。
2020/04/30
ヨコツ
淡々と事実のみを羅列する様に綴られる文章の積み重ねで読み手の感覚をじわじわと揺さぶるのはもはや辻原登のお家芸ともいうべき筆致で、噛めば噛むほど味わい深くなるスルメの様な短編集。作家が主人公であるものが多く、自伝的なの?ねえこれ自伝的なの?と問いかけたくなる内容と、相変わらずの鉄ちゃんを匂わせる細部にわたって詳細な描写にファンとしては喜んだのだけれど、表題作である『Yの木』以外はあっさりとしすぎていてイマイチ乗り切れないまま読み終えてしまった。全編ちょっと消化不良な感がある。
2015/08/30
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